東京商工リサーチ(東京都千代田区)はこのほど、法人を対象に実施した「第3回インボイス制度に関するアンケート調査」 の結果を発表した。有効回答5896社。
10月1日に運用が開始される「インボイス制度」について、「知っている」(99.3%)と回答した企業のうち、適格請求書発行事業者の登録をすでに「申請した」のは92.6%と9割超に達したことがわかった。申請を「9月末まで」(4.1%)、「10月以降」(1.2%)に予定している企業を含めると、98.0%が登録意向を示している。「(申請を)しておらず、方針を決めていない」は0.9%(51社)、「しておらず、する予定はない」は1.0%(59社)だった。規模別では、大企業の95.7%、中小企業の92.1%が申請済みで、大企業が3.6ポイント高い。
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インボイス制度を「知っている」企業(免税事業者は除く)に、インボイス受領の準備状況を聞いたところ、7割以上が「完了している(71.7%)」と回答。制度開始まで1カ月あまりだが、約3割が準備を「完了していない(28.2%)」とし、対応は二分化している。規模別では、「完了している」のは大企業が68.8%、中小企業が72.1%で、中小企業の準備が先行している。「完了していない」のは、大企業31.1%、中小企業27.8%だった。
インボイス制度開始後、免税事業者との取引方針を聞いたところ、「これまで通り」は55.4%で、前回調査から15.1ポイント上昇した。一方、「免税事業者とは取引しない」(8.3%、1.9ポイント減)、「取引価格を引き下げる」(3.4%、0.7ポイント増)が、合わせて1割強(11.7%)を占めた。「検討中」は32.7%(14.0ポイント減)で、3割強が態度を決めかねている。同社は、取引の打ち切りや価格引き下げを求める動きが強まると、制度開始時に免税事業者への影響が出る可能性があると指摘している。
規模別では、「これまで通り」は大企業が63.9%で、中小企業は9.6ポイント低い54.3%だった。「免税事業者とは取引しない」は大企業が5.1%、中小企業が8.7%。「取引価格を引き下げる」は、大企業が0.4%、中小企業が3.7%で、前回調査から1.2ポイント低下した大企業と、0.9ポイント上昇した中小企業で、対称的な結果となった。「検討中」は大企業が30.3%、中小企業が33.0%で、いずれも前回調査から低下したものの、規模にかかわらず取引方針を決めかねている企業が多いことがわかった。
免税事業者と「取引しない」「取引価格を引き下げる」と回答した企業を業種別にみると、最も構成比が高かったのは「飲食店」(26.0%)だった。仕入先が免税事業者の場合、税負担が高まる可能性があるため、小規模事業者が多い「飲食店」では負担増を避ける意向が強いとみられる。上位には、フリーランスとの取引も多い「情報サービス業」(22.2%)や、「廃棄物処理業」(20.0%)、大工工事などの「職別工事業」(16.0%)など、純利益率が平均より低い業種が多かった。
国税庁が公表するインボイス制度の登録件数は、7月末で342万件に達したが、登録ペースは鈍化している。登録しない企業や免税事業者との取引に方針が決まらない企業も多く、制度開始時に混乱が生じる可能性もあるという。同社は、免税事業者には小・零細企業、フリーランスが多く、消費税を相殺できる経過措置だけでなく、支援を継続するなど、慎重な制度運用が求められるとした。
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