矢野経済研究所(東京都中野区)は8月31日、国内のZEB(Net Zero Energy Building)市場を調査した結果を公表した。2023年度の市場規模(建築物の工事費ベース)は3兆900億円と予測する。
政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」や脱炭素経営への進展、2021年の「第6次エネルギー基本計画」で2030年度以降の新築建築物へのZEB(ZEH)水準の省エネ性能確保や省エネ基準の段階的な引き上げが明記されるなど、建築主の環境意識が向上している。大手デベロッパーでも、2030年度までにすべての自社開発物件のZEB化を目指すなど、ZEB設計を基本とする認識が広がりつつある。ZEB Ready、ZEB Orientedは、非ZEB仕様と比較してイニシャルコストの増加分が抑制できるようになってきている。
建物の空調には、一括運転・管理のセントラル空調方式(中央熱源方式)と、フロアや部屋ごとに稼働をコントロールできる個別分散方式(個別熱源方式)があり、ZEBを目指す物件では無駄な電力量を抑えられる個別分散方式空調を選択する傾向が見られる。これまで個別分散方式は、配管の長さの制約から小~中規模の建築物件で採用されてきたが、改良によって対応可能な配管長が延び、大規模な物件にも適用可能となっている。
2030年度のZEB市場規模は、12兆300億円まで拡大すると予測。2030年までに新築建築物の平均でZEB実現を目指す政府目標や、計画段階からZEB設計の新規建築プロジェクトが目立つことから、市場は右肩上がりで推移すると予想される。
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