パナソニック ホールディングス(大阪府門真市)は8月31日、同社が開発したガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池のプロトタイプの実証実験を開始した。技術検証を含め1年をかけてFujisawaサスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST、神奈川県藤沢市)内に新設されたモデルハウス「Future Co-Creation FINECOURTⅢ」で長期実証実験を行う。実証期間は2024年11月29日(予定)まで。
ガラス建材一体型ペロブスカイト太陽電池は、ガラス基板上に発電層を直接形成する「発電するガラス」。さまざまな建築物への利用を目指し、独自のインクジェット塗布製法とレーザー加工技術を組みあわせることで、サイズや透過度、デザインなどの自由度を高めた。カスタマイズにも対応可能とする。従来の結晶シリコン系の太陽電池と同等の発電効率を有し、実用サイズ(>800 cm2)のモジュールとして世界最高レベルの発電効率(17.9%、第三者測定機関による認証効率)を達成している。
実証実験では、モデルハウスの南南東に面した2階バルコニー部分に、グラデーション状の透過型のペロブスカイト太陽電池を配置。三井不動産レジデンシャル連携協力のもと、目隠し性と透光性を両立させたデザインと長期設置による発電性能・耐久性などを検証する。
カーボンニュートラル実現に向け、さらなる再生可能エネルギーの創出手段として太陽電池の普及が求められている。日本のように平地面積が少なく、屋上の設置面積が限られるところでは、窓や壁面等を利用した発電が不可欠となるが、従来の結晶シリコン系の太陽電池は透過性・デザイン面からガラス部への設置が課題となっていた。
同社のガラス建材一体型のペロブスカイト太陽電池はこれらの課題を解決。建築物のデザインと調和する「発電するガラス」として、太陽電池の設置場所の大幅な増大と災害時のレジリエンス向上に貢献する。
同社は、実証実験を通して発電性能・耐久性等を確認しながら、事業化に向けて技術開発を加速させるとしている。
Fujisawa SSTは、パナソニック工場の跡地に開発した郊外型スマートタウンで、藤沢市と18団体からなる街づくり協議会(代表幹事:パナソニックグループ)が推進するプロジェクト。住人・企業・自治体・大学などが共創する仕組みを導入し、新しいサービスの創出を通じて、社会や地域の課題解決を目指す。
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