日本損害保険協会(東京都千代田区)の大知久一専務理事が、関東大震災発生から100年となるのを機に時事通信のインタビューに応じた。地震保険を火災保険加入時にセットで契約する割合(付帯率)は全国平均で約7割(2022年度)に上昇。ただ、都道府県別で見ると過去に大きな地震が発生したかどうかで地域差があり、大知氏は「付帯率の低い地域への啓発に注力する」と強調した。主なやりとりは次の通り。
―付帯率が最も高いのは宮城の89.3%で、高知、熊本、宮崎、鹿児島と続く。一方、低い方は長崎の54.8%を筆頭に沖縄、東京、北海道、佐賀の順となる。
これまでは地域を問わず地震リスクや地震保険加入の必要性を理解してもらえるよう啓発活動を行ってきた。今後は地域差を小さくするため、付帯率の低い地域に対し地域特性を捉えた広告を多く出すなどしたい。
―地震保険はどういう保険か。
法律に基づき、政府と損害保険会社が共同で運営する公共性の高い保険だ。火災保険は火災や風水害で建物などが損害を受けた場合に補償するが、地震や噴火、津波による損害は対象でない。地震に備えるには火災保険とセットで地震保険に加入する必要があり、保険金は建物の修理以外に当面の生活費にも充てることができる。
―地震保険の歴史は。
地震保険制度創設の契機は1964年の新潟地震だ66年5月に地震保険に関する法律が公布・施行され、同6月から地震保険の引き受けがスタートした。
―地震保険の課題は。
首都直下地震や南海トラフ地震の発生が想定されており、巨大地震発生時の保険金支払い体制を強化するため、一層取り組みを進めないといけない。地震保険の損害調査は保険会社の社員や損害鑑定人が被災物件を訪問して立ち会い調査するのが原則だが、被害が甚大な場合はこの調査だけでは迅速な保険金支払いが困難となることが予想される。そのような場合でもすぐに保険金支払いができるよう体制を整備している。
例えば、損保会社社員らで組織する共同調査団をつくり、航空写真などで「全損」と認めた場合は地域単位で認定する仕組みを構築している。被災者の生活を再建するため、一日でも早く保険金を届けられるようにしたい。
―地震保険はどれくらいの規模の地震まで保険金の支払いが可能か。
関東大震災クラスと同規模の地震が発生しても保険金が支払えるよう支払限度額は12兆円に設定している。東日本大震災では1兆3000億円が支払われた。(提供元:時事通信社)
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