無人になり、朽ちるのを待つ日本の古民家に注目する台湾の建築家がいる。台北市に拠点を構えるデザイン会社・JC.Architecture & Designの創業者、ジョニー・チウさんだ。チウさんは歴史的に価値があるモノを再生し価値を広める「Living Lab(リビングラボ)」プロジェクトを台湾で展開しており、古い日本家屋を価値あるアジアンモダンに再生する建築プロジェクトも手がけてきた。このほど、同プロジェクトの第2弾を熊本県で開始する。これまでのプロジェクトと日本での展開について、話を聞いた。
―Living Labプロジェクトとは何か。アジアの古民家を再生してブランド化させることを指すのか。
プロジェクトの内容はその通り。しかし、ブランド化という言葉には違和感がある。ブランドの価値とは歴史であり、古民家はすでにそれを備えている。一方で、古く歴史的なものの近くに住む人たちは、その価値に気付かないことが多い。そのため、あえて言うならば、“歴史的に価値があるモノ”に気付いてもらい、世界に広めることがプロジェクトのミッションだと考える。
古民家に限らず古い列車や、古い建築工法、伝統的な木材など、さまざまな歴史をもつものは、とても価値のあるブランドなのだ、と多くの人に気付かせることが建築家の使命の1つだ。
歴史を踏まえつつ 新しい価値を生む
―台北市には、日本家屋が多数残っていると聞いている。
台湾は明治~昭和にかけて日本による統治を受けていた時期があり、台北市内には日本政府の高官が多く住んでいたこともあって、政府関係の施設が多数残っている。私が住む台北市内の青田街という地域にも、統治時代の家屋が “歴史的な建物”として多く保存されている。しかし・・・
ジョニー・チウ Johnny Chiu JC.Architecture & Design創業者。2016年⽶国建築家協会賞受賞。2019年のLiving Labプロジェクトでは、台北市内の⽇本統治時代の古⺠家を改装しモダンアジアを表現。台北市が公共史跡に指定するも保護の⽅法が⾒つからず、空き家状態で30年以上放置されていたが、現代のラグジュアリー感を伴うレジデンスとして再⽣した。 |
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この記事は新建ハウジング8月30日号16面(2023年8月30日発行)に掲載しています。
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