大幸綜合建設(大阪府東大阪市)は、国の施策や情報の普及により、断熱・耐震など高い住宅性能が一般化して差別化の主要素とならなくなることを想定し、デザイン性や安全性など、自社の家づくりのあらゆる面でのレベルアップを急ぐ。さらに並行して、住宅のノウハウを生かしながら保育園、高齢者福祉施設などをメインとする非住宅建築事業を強化・拡充、不動産事業の拠点も開設して、中古住宅の買取再販×性能向上リノベーションなども積極的に展開していく計画だ。
同社社長の表孝典さんは「人口減少という長期的なトレンドに加えて、住宅価格や電気代の高騰、総体的な物価の上昇による影響など足もとの住宅市場も予断を許さない状況だ」としたうえで、「コロナ禍で痛感したのは、市場の変化のスピードが増していること。時間をかけずに、変化に適応できる事業基盤と体制を構築したい」と力を込める。
同社は今年、創業から76年を迎える。3代目の表さんは、100周年を具体的に見据えながら、経営の舵を取っていく考えだ。
大幸綜合建設で、注文住宅の新築事業を統括するのは、工事部長で建築士の西田宏則さんだ。同社では、西田さんが培ってきた新木造住宅技術研究協議会(新住協)の断熱・気密のノウハウによる、いわゆるHEAT20の“G2.5”程度(G2とG3の間)の断熱性能や許容応力度計算による耐震等級3といった高い標準性能を訴求ポイントとして着実に実績を重ねてきた。
高い性能に加えて、板張りの外壁や奈良県吉野地域で産出・製材される良材「吉野材」の構造材や内装材を標準仕様とするなど、自然素材を活用したデザイン性の高い家づくりも実践。3年前に本社近くの東大阪市内にモデルハウスを建設してからは、「DAIKOstyle(ダイコースタイル)」としてブランディングを強化した成果もあり、年間受注5棟程度と数は多くないものの、“こだわり層”の顧客に対して32~33坪程度の規模で価格4000万円台の品質の高い住宅を安定的に提供している。
“全方位に優れる住宅”を
ただ、こうした状況を踏まえながらも西田さんは「全国の工務店仲間からも同じような声を最近よく聞くが、足もとの集客は確実に落ちている」と危機感を募らす。西田さんは「これまで当社が武器としてきた高性能は近い将来、間違いなくコモディティ化して、差別化の要素にはならなくなる」と予想しながら、「あわせて市場(顧客)の二極化も今まで以上に加速し、これまで当社がメインターゲットとしてきたこだわり層は、さらにこだわりを強めて、より品質の高い“全方位に優れる住宅”を求めるようになるはず」と指摘する。
そこで同社では・・・
この記事は新建ハウジング8月30日号1〜3面(2023年8月30日発行)に掲載しています。
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