建て主の友人である建築家が設計を担当した新築案件でのこと。施工を請け負った工務店の社長Bさんは、初めて付き合う建築家だったので、慎重に現場管理に取り組んだ。しかし、引き渡し1カ月後の台風で雨漏りが発生。建て主のクレームの矛先はBさんに向かうことに…。
漏りが発生したのは、2階のリビングと1階の寝室の窓周辺だ。当然、建て主は補修を求め、原因を尋ねた。「新築なのに雨漏りするってどういうことですか?」。
Bさんとしては窓まわりの防水施工はきっちり行っていたし、自社の施工に重大なミスがあるとは考えにくい状態だった。「施工は図面通りにきっちり行っているのですが…」とBさんは顔を曇らせる。
「設計が悪いというのか?責任転嫁するな!」
歯切れの悪い返答になったのは訳がある。Bさんの目から見て、建築家の設計は雨仕舞いがあまり考えられていないように思えたからだ。建物は軒の出がないスクエアなデザイン。雨はパラペットの内側に巡らせた樋で排出する仕組みになっている。四周の外壁の窓はすべて雨にさらされており、強風で雨が下から吹き付ければ1次防水は突破されてしまう恐れがある。
「この設計は問題あるよなあ。少なくともうちならやらない」。Bさんは内心そう思っていた。
そんな気持ちが伝わったのか、建て主は「きみたちが施工したのに、設計のせいだというのか? 責任転嫁するな」と立腹。当の建築家は「多忙」ということで姿を見せないまま。Bさんは割り切れない思いを抱えながらも、保証期間内でもあるため、無償で雨漏り補修を行った・・・
この記事は新建ハウジング8月20日号13面(2023年8月20日発行)に掲載しています。
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