厚生労働省がこのほど開設した時間外労規制に関する特設サイト「はたらきかたススメ」で、建設業向けのコンテンツが提供されている。その中の「Q&A」で、雪害における除雪作業が労働基準法第33条第1項に基づいて、「上限規制の適用外となる」ことが明記された。人命への危険がある場合に限り、住宅などの除雪作業や交通などへの予防対応も「適用外」として扱うとしている。
上限規制の「適用外」となるのは、除雪作業における▽降雪前の見回り業務▽凍結防止剤の散布業務▽除雪機械の誘導・交通整理の業務▽除雪作業に向けた準備業務▽作業従事者の食事を準備する業務―など。こうした除雪作業に必要不可欠な付随業務については、基本的には「適用外」として認める。
豪雪地帯である長野県・新潟県の労働基準監督署に尋ねたところ、他にも「待機したが実際には降雪が少なく実働しなかった」「現場に駆けつけたが到着に時間が掛かり、すでに作業が終わっていた」「市や県からの要請で深夜に作業を行うことになった」場合にも、該当する可能性が高いという。ただし、一律に認めるわけではなく、個別に上限規制除外の対象かどうか、その都度判断を行うとのことだ。
サイバー攻撃からの復旧も対象に
法第139条第1項では、災害や避けることのできない事由によって、臨時に作業を行う必要がある場合においては、時間外労働時間の上限(月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内)を超えて労働時間を延長できるとしている。厚労省の基本的な考えとしては、「労働時間の上限規制の趣旨を踏まえれば、36協定で定める時間外労働の限度時間で対応できることが望ましい」が、人命または公益を保護するための作業については、やむを得ず例外として認める方針。
除外の適用は、急病や人命に関わる災害(地震・津波・風水害・雪害・爆発・火災など)のほか、差し迫った恐れがある場合の事前対応も対象となる。例えば、水道・電気などのライフラインの復旧や、突発的な機械・設備の故障の修理、サイバー攻撃によるシステム障害の復旧についても認められる。一方、単なる業務の繁忙など経営上の必要については対象外で、前もって予見されるような部分的な修理、定期的な保安などは許可されない。
「36協定届」にあらかじめ記載を
自然災害の発生直後に復旧作業を行う、いわゆる「災害協定」を自治体などと結んでいる事業場(団体の会員を含む)については、あらかじめ想定される復旧・復興の具体内容を36協定により届け出ておく必要がある。また突発的な事由により、協定届に記載した延長時間を超えて労働する場合や、36協定を締結せずに災害対応を行った場合は、事後速やかに許可申請を行わなければならない。
厚生労働省によると、いずれの場合も「上限規制の適用外となるかどうかといった個別のケースについては、各都道府県の労働基準監督署が窓口となり判断を行う」という。最近、大阪・関西万博(日本国際博覧会)の工事の遅れが上限規制除外の対象かどうかを問う事案があったが、こうしたレアケースについても管轄する労働基準監督署が判断する。
■「はたらきかたススメ」で公開しているパンフレット(PDF)>>>「建設業 時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」
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