気候変動対策に取り組む市民活動グループ「ゼロエミ横浜」が、学校の断熱改修を求める署名活動を実施している。文部科学省の施策により2018年以降、生徒の熱中症対策として学校へのクーラー設置が進んでいるが、天井や壁、窓への断熱処理が行われていないために、冷暖房の効果が損なわれていると主張するもの。冷暖房によるエネルギー使用量を減らし、二酸化炭素の排出を削減するためにも、教室の断熱改修を進めるべきだとしている。集められた署名は文部科学大臣や各都道府県知事に届けられる。
署名活動の呼び掛け人の一人である東京大学大学院准教授の前真之さん は、「この夏教室がめちゃ暑い!2035年までに全ての教室の断熱改修を国と自治体が進めるべき理由」と題したYouTube動画の中で、学校の教室にエアコンは設置されたものの、断熱・換気計画がないために「生徒たちは夏の暑さ、冬の寒さに苦しんでいる」と説明。エアコンの電気代や維持費が地方自治体の負担にもなっていることから、「天井壁の断熱」「窓の日射遮蔽・断熱」「デマンド換気設備」の“断熱改修3点セット”を教室に施し、電気代を抑えるべきだとしている。
また、さいたま市内の小学校で実施した温熱環境計測結果を動画で公表。エアコンを設置・使用した教室で、断熱改修をした場合と改修をしなかった場合の室温などの変化について比較している。実験の結果、未改修の教室では天井付近の気温が40~42℃に達し、冷房の効率も悪かったが、天井の断熱改修済みの教室では、天井などからの熱侵入が5分の1に抑えられ、室内気温を素早く下げることができたことを明らかにした。
こうした結果を踏まえて同団体では、全国の小・中・高校のすべての教室の断熱化のために補助金を出してほしいと訴えている。
熱中症搬送者は1万人超え
気象庁が公表する「最高気温ランキング」によると、観測史上最も高かった気温は41.1℃で、2020年8月に静岡県浜松市で記録。ランキング上位20位のうち14件が2018年以降に計測された気温となっている。また総務省消防庁によると、連日猛暑が続いた2023年7月31日~8月6日の熱中症による救急搬送者は1万810人で、前週の1万1765人からは減少したものの、依然として1万人を超えている。このうち7歳以上18歳未満の搬送者は1059人で、「教育機関」での発症は、夏休み期間にも関わらず378人(3.5%)となっている。
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