大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)の海外パビリオンで工事契約・着工の遅れが指摘される中、過労死を防ぐための活動を行う「過労死弁護団全国連絡会議」は8月3日、万博協会が時間外労働の上限規制の適用除外を求めたことに対して抗議声明を発表した。「上限規制の適用除外要望に対して最大限の強さをもって抗議するとともに即時の撤回を求め、政府に対してもこのような要望に対しては直ちに許容できないことを表明することを求める」としている。
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同件について西村経産相は「(万博協会から)直接要請を受けてはいないが、協会とともに課題を洗い出す過程において話に上がったもの」と説明。吉村大阪府知事は、時間外労働規制を外すべきだとの訴えは事業者側から万博協会にあったものだと話している。
声明文では、東京オリンピックの新国立競技場建設工事に当たっていた現場監督が、月190時間以上の時間外労働を行い過労死した事例を挙げ、「現在の大阪・関西万博と全く同様の構造」だと指摘。4月1日から建設業で適用される時間外労働の上限規制で、1カ月間の時間外労働を100時間未満と定めていること、労働力不足を理由として適用除外の延長を求めることは、労働者の生命・身体を危険にさらすことを許容するものだと述べている。
また同万博では、メインテーマに「いのち輝く未来社会のデザイン」、サブテーマに「Saving Lives(いのちを救う)」、持続可能性に配慮した調達コード(基準)に「長時間労働の禁止」と定めてあることから、上限を超えた時間外労働を要求することは「言語道断だ」とした。
「業務繁忙では認めない」加藤厚労相
万博を上限規制の除外対象とするかについて、加藤厚労働相は「働く方の健康確保の観点から、時間外労働の上限規制を円滑に施行することが重要」だとした上で、除外を規定した労働基準法第33条について、「緊急、災害、不可抗力その他客観的に避けることのできない場合に限られており、単なる業務の繁忙については認められない」と回答している。
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