厚生労働省が8月3日に公表した2022年度の長時間労働が疑われる事業場への監督指導結果によると、監督指導が行われた事業場は全産業で3万3218事業場に上り、このうち建設業は3228件(10.1%)だった。全産業中4番目に多かった。最も指導した事業場が多かったのは「商業」で、全体の4分の1に当たる。
同調査は、時間外・休日労働時間数が1カ月当たり80時間を超えていると想定される事業場や、長時間による過労死などの労災請求が行われた事業場を対象に実施したもの。違法な時間外労働を確認した事業所には、是正・改善に向けた指導を行っている。
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違法な時間外労働があったのは1万4147事業場で、このうち月100時間を超えていた事業所が3320件、月200時間を超えていた事業場は168件あった。さらに賃金不払残業が認められた事業所が3006件、過重労働による健康障害防止措置が未実施の事業所が8852件あった。建設業では、監督指導が行われた3228件のうち、労働基準関係法令違反があったのは2636件。内訳は「労働時間」が1450件、「賃金不払残業」が337件、「健康障害防止措置」が874件となっている。
指導を実施した事業所が行っていた労働時間の管理方法で最も多かったのは、「タイムカードを基礎」の1万3423件。次いで「自己申告制」9059件、「IC・IDカードを基礎」5236件、「使用者が自ら現認」3243件、「PCの使用時間の記録を基礎」1439件の順に多かった。自己申告は実際の労働時間との間に乖離(かいり)が起きやすいことから、実態調査を行うことにより所要の労働時間の補正をする必要がある。
「労働時間の見える化」で環境改善
同省では指導調査結果の公表と併せて、長時間労働削減のための取り組み事例を掲載。建設業の事例として、ある総合建設事業者(労働者数約100人)の取り組みを紹介している。戸建て建築工事から公共工事までを手がける同事業所では、全国各地で働く労働者の労働時間を本社でリアルタイムに確認できる勤怠管理システムを導入。労働時間の見える化を図っている。
また、工事期間の終了後に代休、リフレッシュ休暇、年次有給休暇を活用して、「2週間連続休暇」が取得できる環境づくりを実施。社員ごとに年休取得計画表を作成し、休暇取得率の向上を促している。その結果、1人当たりの月間時間外労働が、25.5時間(2017年)から22.2時間(2019年)に縮減。年次有給休暇の取得率が3.9日(2021年)から 6.1日(2022年)に向上したという。
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