名選手、名監督にあらず―。「スポーツだけでなく、家づくりの世界でも一緒です。社長やトップ営業マンが “人材育成” に長けている訳ではありません。だからこそ、少数精鋭の事業経営が求められる工務店に必要なのは、業務の標準化であり、徹底した仕組み化です」。こう話すのは、エンサポート(愛知県名古屋市)社長の山口勝也さん。同社は地域工務店や住宅会社のDX化や組織構築などの支援を手がけている。今年7月から組織営業の強化を目的とした DX サービス「せしゅらく」を展開している。
住宅業界に25年間従事。注文・分譲・仲介事業において、累計1000物件以上の企画・調達・管理・販売の実績。上場廃止・民事再生・IPOを経験し、顧客起点の重要さを身をもって経験する。2021年、株式会社エンサポートを創業住宅専門家として、注文住宅に特化した組織営業強化サービス「せしゅらく」や、住宅購入者検討者のためのセカンドオピニオンサービス「ie start(イエスタート)」を提供する。保有資格は、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(CFP®)や公認 不動産コンサルティングマスターのほか、経営学修士(MBA)など、住宅および経営分野において多岐にわたる
同社は2021年8月に創業した新進気鋭のスタートアップであるが、一般の住宅コンサルティング会社とは一線を画している。その特徴は、社長の山口さんのバックボーンが工務店にあることだ。
同社を創業する以前、山口さんは、中部地方にある工務店と住宅会社の2社に在籍し、約25年間にわたって営業や提案設計、企画、人材育成に携わってきた。経営層としても会社の舵取りを担いIPO(株式上場)まで導いた経験も持つ。
在籍時には、「業界の底上げを」という社の方針もあり、全国から地域工務店や住宅会社などの同業者からの視察や相談の受け入れを行い、実務ノウハウを惜しみなく提供してきた。自社での家づくりの経験、そして、同業者との交流の中で痛感したのが、工務店の共通課題として叫ばれている“業務の属人化” だったという。
山口さんは、「家づくりにおいて、特定の社員にしかわからない、または一部社員にしか担当することができない状態が多くの組織で起きている」と危機感を募らす。具体的なリスクとして、▽業務効率の低下▽品質の低下▽人材流動性の低下―などを挙げた。
「注文住宅や分譲を含めて1000棟以上の家づくりに携わってきました。その中で『この人じゃないとわからない・できない』というケースを多くの場面で目の当たりにしてきました」。たとえば、担当者の離職や休職で業務が滞ったり、または担当以外の社員が業務を理解するのに膨大な時間が掛かったりすることは日常茶飯事だ。一方、品質面においても、担当者の経験値やスキルによりミスが発生することや、住宅の品質にバラつきが出るといった問題もある。
「住宅は、一生に一度の買い物です。それなのに、組織側の課題によって同じ会社にも関わらす対応の品質に差が生じてしまうことは、顧客側からすると許されるはずがありません」。
顧客満足度の向上と、工務店の成長を好循環させる
こうした工務店の課題を解決しようと、山口さんは独立し、工務店支援に携わることを決めた。そのソリューションとして提供しているのが、組織営業の強化支援を目的とした「せしゅらく」だ。昨年8月に試験的に開始したもので、今年7月から本格展開する。すでに全国の工務店や住宅会社で10社が導入している。
「せしゅらく」は、注文住宅事業に特化した会員限定のWEB サービス。山口さんがリアル・オンラインを用いて、個や組織力の強化を目指し、学習コンテンツを提供。顧客満足度の向上と工務店の成長を好循環させることが目的だ。
主に3つの機能で構成している。①コンテンツ ②トレーニング(オンライン・リアル) ③チームビルド—。前提として、このサービスを利用する工務店が単独で使うものでなく、山口さんが事前に組織課題などをヒアリングし、定量的かつ定性的な適切なゴール設定を行った上で、伴走しながら成長を図っていく。
①のコンテンツでは、実践的な商談資料をダウンロードできる。「初回面談力アップ」「次アポ率アップ」「顧客満足アップ」「マーケティング戦略力アップ」「マネジメント効率アップ」など様々なジャンルで応用できる。たとえば、生活者における「家づくりのカギ6大要素」を細分化して、それをポイント別に解説したツールがある。資金編では、予算やローン計画の考え方、教育費、税金といったあらゆるパターンを想定したコンテンツを用意。建物編では、間取りや性能、構造、価格などについて、専門知識のない生活者が理解できるように解説をしている。このほかにも、土地編やライフプランに関わる動機編、時期編など、家づくりにおける重要なポイントを押さえたツールを各種用意している。
②のトレーニングでは、定例開催のリアルとオンラインによる勉強会で、実践研修を受講できる。経験と知識を向上させて「受注率・次回アポ率」を高めるための商談スキルを早期に習得していく。複数の工務店による合同開催につき、他の参加者が考える顧客の対応方法を知る機会や、実例を用いたケースメソッドが提供される。
「高性能住宅を売りにしている工務店とデザイン住宅を売りにしている工務店では、顧客対応に関わる視点も違う。各社の特徴を活かしたうえで、顧客との関係性を築くための仕組み作りを支援します」(山口さん)。
自社の強みをマーケットフィットさせる
とくに反響が大きいのが③のチームビルド。組織力を向上させるための“顧客視点” による研修を設けている。具体的には▽マネジメント▽経営計画▽マーケティング—に分類し、課題解決できる論理的な思考能力を養うことを目指す。それぞれワンクール6カ月のプログラムになっている。
山口さんは、「自社の強みが言語化できていたとしても、それが客観的にみてニーズと合致していない場合が多くあります。たとえば、高性能住宅でもデータだけを示すだけでなく、地域での競争優位性をいかに示していくのかが重要。そのためには、自社の強みを明確化し、社内での方針を統一させるための施策も必要です」と説明する。そのために、「ポジショニングプログラム」や、顧客が求める価値と自社が提供するためのサービスを整合させるための「マーケットフィットプログラム」などを戦略的に構築していく。
家業から企業へ
一方、経営計画においては“家業から企業” へと変革を促すための組織作りの構築にも取り組む。社長やトップ営業に頼らず、現場スタッフが自走しながら成果を出すための組織改革を後押ししていく。
チームビルドでは、山口さんと工務店によるマンツーマンのプログラムが提供されるほか、サービスを利用する工務店が集い、ナレッジやデータの共有、課題解決に向けたディスカッションやプレゼン発表を通じ、切磋琢磨しながら、地域で選ばれ続ける工務店になることを目指す。
山口さんは、「地域で優れた家づくりをしているのに、組織体制が整備されておらず、受注や集客に苦戦している―そんな工務店を目の当たりにしてきました。私は工務店の“ よきパートナー ”としてサポートしたいと考えています。『せしゅらく』を活用してもらうことで、個の飛躍と工務店の成長が好循環する仕組みづくりに貢献することができるはずです」と語った。
(sponsored by エンサポート)
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