GMOグローバルサイン・ホールディングス(東京都渋谷区)と全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連、東京都千代田区)は7月27日、不動産事業者を対象に実施した「不動産取引における電子契約の実態調査」の結果を発表した。有効回答は1723件(電子契約導入企業112件、未導入企業1611件)。電子契約を導入している企業に、電子契約を実施した際の顧客の反応を聞いたところ、71.2%が「おおむね好評だった」と回答した。電子契約システムは新型コロナの影響で普及拡大したが、新型コロナが収束し始めた現在でも顧客ニーズが一定以上存在していることがわかる。
また、電子契約システムの導入効果として約半数の企業が「契約書等の書類送付の省力化および業務効率化が実現」(56.6%)、「顧客との日程調整が容易になる」(53.9%)、「印紙税コスト削減」(50.0%)、「書類の保管・管理が容易になる」「ペーパーレス化の実現」(48.7%)につながったと回答。導入目的をおおむね達成していた。
一方、電子契約システムを未導入の企業に、導入している不動産関連システムを聞いたところ、「特に導入しているツールは無い」が57.2%で最多となった。導入ツールで最も多かったのは「テレビ会議システム」(19.8%)で、過半数の企業で不動産DXが進展していないことが判明した。
電子契約システムの「導入予定がない」と回答した企業では、約7割が「紙の契約締結で十分」(69.5%)を理由にあげている。「顧客からのニーズがない」は56.7%で、顧客も含めて電子契約が一般化していない現状が明らかとなった。さらに「電子契約システムを使いこなせる担当者の不在」(37.4%)、「電子契約をよく知らない」(36.6%)、「デジタル化への苦手意識」(29.0%)、「電子契約のセキュリティへの不安」(27.3%)と、デジタル化への懸念があることがわかった。
国土交通省のマニュアルに基づいた電子契約業務において、導入企業が実務上の課題としてあげたのは、「電子契約実施前に書面やメールでの事前承諾が必要」が66.0%と最多。次いで「重要事項説明書交付時の開封確認と署名パネルの説明」(35.8%)、「重要事項説明書と契約書の同時送信ができない」(26.4%)、「紙の契約と同等の取り扱いを希望する」(24.5%)が続き、具体的な課題と要望が浮き彫りになった。
改正宅建業法により、不動産取引における電子契約の利用が可能となってから1年以上が経過したが、業界全体への普及にはまだ時間がかかることが予想される。国内の労働力人口が急速に減少するなか、不動産事業者の成長と存続にはデジタル化への取り組みが必要となる。両者は、同調査を通じて導入・未導入企業から求められている施策ニーズを把握し、電子契約普及に向けて引き続き協業体制を強化するとしている。
同調査の対象は、全国宅地建物取引業協会連合会会員、「電子印鑑GMOサイン」の利用者および検討者。
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