厚生労働省は7月27日、2022年(1月~12月)に実施した「賃金不払が疑われる事業場に対する監督指導結果」を報告した。全国の労働基準監督署(労基署)で取り扱った賃金不払事案の件数は2万531件。このうち建設業は4番目に多い2398件だった。今回対象となった労働者数は全産業で17万9643人、金額は121億2316万円。建設業での対象労働者数は1万2350人、金額は13.1億円に及んだ。
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このうち労働基準監督署の指導により支払いが解決したのは、全産業の96.0%に当たる1万9708件。労働者は17万5893人(98.0%)、金額は79億4597万円(65.5%)。1事案における支払い額の最大は2.7億円だった。
同省では、賃金不払が疑われる事業場に対して監督指導を実施。指導後も度重なる指導にもかかわらず是正しない事案については送検などを行っている。また賃金不払事案の解消に向けた取り組みの一環として、2022年3月までは割増賃金不払額が100万円以上の事案のみを集計していたが、今回から全事案について集計・公表する方針に変更した。
労働者の申告で発覚
ある事業所では、「タイムカードがなく、労働時間が適正に把握されていない」との情報を基に、労基署が監督指導を実施。労働時間は自己申告制により把握していたが、パソコンの使用記録や作業記録、自己申告で残業時間として申請した時間に乖(かい)離が認められたため、不払いとなっていた割増賃金を支払うよう指導した。
また別の事業所では、外国人労働者から違法な時間外労働の申告があったことから申告監督を実施。タイムカードや賃金台帳の記載が申告内容と異なっていたため捜査したところ、外国人労働者3人に対し、36協定による限度時間を超えて、月に113時間から123時間の時間外・休日労働をしていた。
さらに割増賃金約300万円を所定期日に支払っていないことが判明。虚偽の陳述と賃金台帳を提出していたことも分かった。同事業所については前回の監督指導でも同様の実態があったという。
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