建設業界における二酸化炭素排出量削減の気運が高まる中で、住宅用建材の持続可能性が追求されていくにつれ、新たな素材を使用したサステナブルな代替建材に注目が集まっている。産業用大麻(向精神性物質テトラヒドロカンナビノール含有量が0.3%以下の大麻)を使用した「ヘンプクリート」もそのひとつで、2022年10月にはアメリカにおける住宅建設への使用が承認され、2023年6月には南アフリカ・ケープタウンに世界で最も高いヘンプクリートを使用した建物ができるなど、世界中でその利用が拡大している。
麻の茎の皮を剝ぎ乾燥させた「苧殻(おがら)」に石灰などを混ぜ合わせることで作られるヘンプクリートは、二酸化炭素排出量を減らし、二酸化炭素を吸収する機能を持つと言われている。また、耐火性や抗カビ性、吸湿性があり、揮発性の化学物質や化石燃料を使用しないという点でも優れており、壁や床システム、天井などの断熱材として有用な建材となっている。
他の代替建材よりも高いサステナビリティを持つだけでなく、シンプルな構造を実現できるというメリットもあり、長い乾燥時間やエキスパンションジョイントを必要としないため、一般的な生産スケジュールの20〜30%を削減できるという。
加えて産業用大麻は、「ヘンプクリート」以外の形態でも建築や住宅改修に幅広く活用することができる。木材のように加工した「ヘンプウッド」は従来のオーク材程度の耐久性を持ち、ベンチや棚、まな板、窓枠、ドレッサー、テーブルなどに使用することが可能。また、ヘンプシードオイルはフローリングやテーブル、ドアなどを仕上げるために利用することができる。
このように高い持続可能性と有用性を持つ産業用大麻だが、現在ネックとなっているのはサプライチェーンの整備。すでにヨーロッパでは産業用大麻の建材としての活用が広がっているものの、比較的最近目を付け始めたアメリカなどでは生産体制の確立がまだ十分ではない。有識者らによると、目下の課題は農家で収穫された産業用大麻を市場に届けるための加工インフラの整備になるという。
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