国土交通省の国土技術政策総合研究所(国総研)は、7月28日に公開した研究報告の中で、非住宅建築物向けの新しい防火性能指標と評価プログラムを開発したことを明らかにした。制度化に至るまでにはいくつかの課題が残されているが、非住宅建築物の防火性能を一般消費者にも分かりやすく表示する手段として注目される。
住宅については「住宅性能表示制度」により、耐震性能、防耐火性能、省エネルギー性能などの住宅性能が一般消費者にも分かるよう、共通ルールによる制度化がされている。一方、非住宅については建築物の防火性能を分かりやすく表示する制度が未整備のままで、これまで建築主が防火仕様を選択する際の判断材料が示されていなかった。そこで同研究では、「住宅性能表示制度」を参考にすることで、非住宅における防火性能の表示化を試みている。
直感的な性能把握が可能
同研究では、物販店舗、倉庫、事務所、庁舎、病院などの非住宅建築物を対象に、建築物に対して要求される防火性能を7つに分類。①出火防止性能、②火災成長防止性能、③倒壊防止性能、④延焼防止性能、⑤煙制御・避難安全性能、⑥消防活動支援性能、⑦機能維持性能―のうち「①出火防止性能」と「⑥消防活動支援性能」を除く5つの性能について、評価手続きの要件を整理した。建築物の内部で火災が発生した場合に生じる各事象の発生確率および最終的な被害を、工学的知見に基づき定式化している。
建築物の性能を「部分の仕様」から判断するのではなく、「全体の性能」に換算しているのが同プログラムの特長で、直感的な性能の把握が行える仕様となっている。これにより「住宅性能表示制度」と同様に、建築物の性能に精通した専門家でなくても、簡単な手続きにより建築物の等級化が行えるようになるという。また、「全体の性能」を確保するための手段を設計者の判断に委ねられるようにしたことで設計の自由度を確保した。
その一方で、防火設計仕様の判断を行う建築主が防火性能に精通しているとは限らないことから、丁寧な解説とガイドラインを作成し、理解を図る必要があるとしている。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。