世界的に記録的な大雨による深刻な浸水被害が多発している。こうした中、環境省は7月21日、スーパーコンピュータを用いて予測した「未来の台風」の姿についてまとめたパンフレット「勢力を増す台風~我々はどのようなリスクに直面しているのか~」を公開した。気候変動の身近なリスクを知ることで、今後の気象災害対策や気候変動への適応策を考えるきっかけにしてほしいと呼び掛けている。
同予測では、地球温暖化が進行した場合のシナリオとして、工業化以前(18世紀半ば頃)の世界平均気温を基準とした「2℃上昇シナリオ」「4℃上昇シナリオ」の2種類を作成。元となる台風のモデルとして、2019年10月の「台風第19号」(東日本台風)、2018年「台風第21号」を使用した。19年台風19号は広範囲の河川の氾濫・土砂災害が発生し、死者91人を出したほか、住宅全壊3273棟、半壊・一部損壊6万3743棟、浸水被害2万9556棟を記録している。
降水量・風速とも危険な状態に
「19年台風19号」×「4℃上昇シナリオ」で予測した未来の台風の気圧は、平均11.3hPa(最大22.0hPa)低下し、台風19号よりも強度が増すことが予想される。台風は勢力を増すほど中心気圧が低くなる傾向があることから、台風がより発達した状態で上陸する可能性が高くなる。
降水量は平均29.5%(最大66.7%)増加。河川の最大流量(ピーク流量)も平均23%(最大34%)上昇する予測となっている。台風19号の3日間の総降水量は、神奈川県箱根で1000ミリ、東日本を中心に17地点で500ミリ超える量となったが、将来の台風が荒川水系上流で雨を降らせた場合、国の河川整備計画方針を上回る流量になることが判明している。洪水氾濫が発生する範囲も拡大し、これまでに浸水の経験が少ない地域でも発生する可能性があるとしている。
風速は、最大風速が平均3.1m/s(最大10.0m/s)増加すると予測。猛烈な風を記録した台風19号が34.8m/s(東京都羽田)だったことから、極めて危険な状態になることが予想される。
また、同様のシナリオで東京湾周辺が満潮だった場合、最大潮位偏差は平均21.4%(最大95.7%)となり、最大潮位が3.2m2を超えると予測した。
仮に19号レベルの台風が現在襲来し、満潮だった場合も、現状の防護水準を上回る潮位となる可能性があるという。さらに地球温暖化で海面上昇が進行すると、それに伴って高潮リスクも高まるとしている。
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