2023年7月1日からカナダ西部のブリティッシュ・コロンビア州(BC州)でカナダ国際港湾倉庫労働組合(ILWUカナダ)による港湾ストライキが発生し、2週間が経過した。カナダ連邦政府の調停により13日に4年間の労使協約に関する暫定合意に達したと報じられたが、ILWUカナダはこの調停案を拒否し、18日午後4時半から再びピケを張り、ストを再開することになった。
二転三転する状況だが、既にバンクーバーの貿易委員会はストに伴う貿易への影響は10億ドルに相当すると指摘、さらに期近に労使紛争が解決してもバンクーバー港の機能が正常化するには数カ月を要するとし、カナダの経済界は「連邦政府の法的強制介入以外の選択肢が見当たらない」と述べている。
バンクーバーの木材製品輸出事業者は「港湾労働者の賃金は驚くほど高額と聞いている。インフレに伴う物価高は確かに厳しいが、ここまで泥沼化するとは思わなかった。それにもILWUカナダは強力なパワーを持っている」と語る。
この2週間、BC州の拠点港湾であるバンクーバー港、北部のプリンスルパート港ともに、貨物の荷下ろし、港湾業務、鉄道接続、コンテナリリースなど全荷役が停止、貨物の入出荷に支障をきたしている。
カナダ西部内陸を拠点とする総合林産大手のキャンフォーは、傘下のノースウッドパルプ工場の生産を13日から削減すると発表した。バンクーバー港での滞船(沖待ち)も急増しており、正常化が遅れるようだと日本向け製材出荷にも影響が出てくるとみられる。BC州の木材業界団体であるカナダ林産業審議会は「短期的には在庫積み増しで対応できるが、いずれ工場在庫が満杯になれば生産調整せざるを得ない」と指摘していた。
今回のストの主体はILWUカナダ(組合員約7400人、ロブ・アシュトン会長)で、使用者側団体のブリティッシュ・コロンビア州海事雇用者団体(BCMEA)との間で行われていた労使交渉が行き詰まり、6月28日に事前スト通告を行い7月1日からストに突入したものだ。前回労使協約が期限切れとなった後、新型コロナ感染症問題が深刻化し、新たな協約合意を得られないまま、今回のストに至った。
7月8日にはカナダ連邦政府が派遣した調停者が仲介に入り労使協約に向けた交渉の再開を促している。そして13日、一時は暫定合意が伝えられ、ストは停止されたが、その後、ILWUカナダ側が暫定合意案を拒否し、18日午後4時半からのスト再開を宣告した。
争点はILWUカナダによる港湾の定期メンテナンス拡大、賃上げ、港湾自動化などとされているが、新型コロナ感染症問題を背景に海上船運賃が高騰し船社大手が大幅に収益を拡大させたことに対する応分の分配(賃上げ)がILWU側の重要な獲得目標になっているようだ。
今回のストでは米国の港湾労働組合(西海岸のILWU及び東海岸のILA)がILWUカナダを支持し、迂回貨物の荷役を拒否している。コンテナ船は通常、米国西岸のロサンゼルス、ロングビュー、シアトル、カナダのバンクーバーと北上して貨物を集荷するが、バンクーバー港での滞船が明らかなことから、同港への寄港を取りやめにする船社も出ている。
6月末時点では沖待ち滞船はほぼゼロであったが7月10日には14船が滞船しており、現地のシッパーに聞くと「バンクーバー港への寄港を回避する船社も出ている」とのことだ。
2023年1~5月のカナダ産針葉樹製材に日本向け出荷量は31万1000㎥(前年同期比37%減)、パルプ5万6000トン(同46%減)、丸太27万9000㎥(同25%減)などと全体に落ち込みが目立っており、円安ドル高も影響して日本市場向け需要不振が顕著だ。
このため、当面、日本向け供給が遅れても、すぐに品不足問題が出てくるとは考えにくいが、予定していた入荷日程が先送りとなることから、特にSPF製材を原材料とする2×4住宅会社及び2×4コンポーネント関係に影響が出てくる。また、今後、ストが早期解決となっても既にバンクーバー港に入港する貨物が大量に足止めされており、日本向け製材輸出業務も著しく遅延するとみられる。
米国製材市況はカナダ各地で多発している山林火災、今回の港湾スト、カナダ製材産地の減産強化、米国住宅需要の底堅さなどを受けて5月末底値比で100ドル(1000ボードフィート当たり)弱の値上がりとなっているが、日本向けSPF2×4製材(Jグレード)は550ドル(C&F、1000ボードフィート)まで続落している。ただ、新規の日本向け製材価格動向は流動的になりそうだ。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。