東京商工リサーチ(東京都千代田区)は7月18日、国内245万564社の3月末時点の資本金を調査した結果を発表した。前年の2022年3月末と比較して、資本金を増資した企業は1万2931社(前年比9.0%増)、減資は3201社(同11.1%増)となり、増減資ともに前年を上回った。
産業別でみると、増資が最も多かったのはサービス業他の3302社(構成比25.5%)で、建設業の3009社(同23.2%)が続いた。増加率は不動産業(23.3%増)がトップ。店舗休業などコロナの影響を受けたが、経済活動の活発化で増資した企業が大幅に増えた。減資企業はサービス業他の878社(同27.4%)が最多となり、農・林・漁・鉱業が60.7%増と急増した。円安や燃料高などのコスト増により、収益悪化や赤字補填などで減資した企業が増えたとみられる。
売上規模の大きい企業の減資目立つ
資本金1億円超から1億円以下に減資した企業は、前年比28.7%増の1235社だった。1億円以下の増加率は、全体の減資企業の増加率(11.1%増)の2.5倍となった。産業別の件数は、サービス業他が340社(構成比27.5%)と最も多く、製造業247社(同20.0%)、情報通信業236社(同19.1%)と続いた。増加率は、建設業が46.8%増と最も高い。次いで製造業42.7%増、運輸業41.9%増と、物価高の影響を受けた産業で増加した。
直近売上高は、100億円以上が前年比30.8%増の174社(構成比14.0%)、50億円以上100億円未満が48.9%増の137社(同11.0%)と大幅に増え、売上規模の大きい企業の減資が目立つ。損益別(当期利益)は、前年は黒字(構成比36.8%)と赤字(同38.1%)が拮抗していたが、2023年は黒字が546社(同44.2%)と大幅に上昇。減資の原因が経営不振によるものだけでない側面もみられた。
資本金が1億円を超える大企業が、1億円以下に減額する「減資」ブームが継続しているが、現在は減資が信用低下に繋がりにくい上、1億円以下にすると外形標準課税の課税対象から外れるなど、税負担軽減のメリットがあることが背景にあると考えられる。ただ、コロナ禍で悪化した財務体質の強化を目的とした減資がある一方、株主資本に影響が出ない資本剰余金などに振り替える形式的な無償減資など、税負担の公平性が問題になるケースも増えている。
総務省によると外形標準課税の対象法人数(資本金1億円超)は2006年の2万9618社から、2020年は1万9989社と3分の2に減少している。同社は、現状のまま制度運用を放置すると、今後も減資企業が増える可能性が高いと指摘。ただ、安易な制度変更は中小企業への影響がさけられないため、見直しには慎重な議論が必要だとしている。
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