ちょっとしたついでにOB顧客のもとを訪れたら、サッシの建て付けがよくないのだという。「いつでもいいから時間ができたらお願い」という言葉に甘えてつい後回しにしていたら、ひと月後に「いつになるのよ!」と怒りの電話が。「いつでもいい」って、いつまでいいのだろう?
「まあ、うちもすぐに対処しなかったので、非があることは重々承知しているのですが…」とぼやくのは、地場の工務店社長のFさんだ。父の代から地域に根ざして40年以上、新築、リフォームと幅広く地元の住宅ニーズに対応してきた。
今回怒らせてしまった建て主は、築後15年を経て、付き合いも長い。折に触れて、給湯器の交換やウッドデッキの補修など、何度か、家のメンテナンスも行ってきた。「それだけに、このくらいのことで怒るもんかなあ」と首をひねってしまうのだった。
「今度時間のあるときにでも」
ことの経緯はこうだ。ちょうどリフォームを受注した家の近くにその建て主の家があったので、現場からの帰り道に「ちょっと寄ってみるか。親戚から送ってきた果物もあるし、おすそ分けだ」とFさんは思い立った。
突然の訪問だったので、建て主の奥様も驚いたようだったが、手土産を渡すと笑顔を見せてくれた。そのときだ。「そういえば、掃き出し窓の建て付けがよくないんですよ。今、見てもらえる?」と奥様。
本当にちょっと立ち寄るだけのつもりだったので、Fさんはちょっと困った顔に。会社に戻って早く片付けないといけない事務仕事が待っていたのだ。一瞬、躊躇(ちゅうちょ)したFさんの様子を見て、奥様は「ああ、社長さんも忙しいですよね。じゃあ、今度また時間ができたら見に来てください。いつでもいいので」と言ってくれた。
Fさんは「あ、助かった」と内心思いつつ、「ではまた今度、うかがいますね」と建て主宅を辞した。
「いま困っていることなのだから最優先にすべきだった」
それから・・・
この記事は新建ハウジング7月20日号8面(2023年7月20日発行)に掲載しています。
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