総合マーケティングビジネスの富士経済(東京都中央区)はこのほど、音響メタマテリアルの国内市場を調査した結果を「音響メタマテリアルの将来展望とポテンシャル調査」にまとめ、一部を公表した。
音響メタマテリアルは、既存の材料では困難な防音を可能にする次世代防音材として、建築、自動車、家電等の分野で注目されている。調査結果によると、2023年の音響メタマテリアルの国内市場規模は17億円を見込む。2022年にオフィスの吸音パネルとエアコンの室外機向け遮音材として実用を開始したことから、2023年時点では家電主体となっているが、今後は建築が主体となると予想される。建築現場の騒音対策やEVの車内静音化の需要を取り込むほか、航空・宇宙や医療機器での採用開始により、2035年は561億円を予測する。
建築(オフィス、工事、工場含む)では、オフィス向け吸音パネルや天井、壁、パーティションなどへの採用が進み、2023年の市場規模を3億円と見込む。オフィスではWEBミーティングなどの増加により、音漏れや室内反響音対策の必要性が増すなか、排煙装置・スプリンクラー設置のための開口部からの音漏れが問題となっていることから、採用ニーズが増加すると予想される。また今後、集合住宅の床振動遮断や工事現場の防音パネル、工場の機械や排熱ファンによる騒音対策、サーバールームの騒音対策としても需要増加が期待されている。2035年の市場は、2023年見込比144.7倍の434億円と予測する。
メタマテリアルは、光の屈折や反射制御などの点で自然界に存在する物質にはない特性を持つ人工物質で、音響メタマテリアルは、メタマテリアルを音波の伝播制御に適用したもの。質量則や材料特性を上回る防音性能を発揮するのが特徴。建築や自動車などの分野では、低周波数帯から中周波数帯の騒音防止が求められているが、既存の防音材では遮音性に限界があることから、音響メタマテリアルへの注目度が高まっている。
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