47都道府県の知事が組織する全国知事会は7月3日、「第7回国産木材活用プロジェクトチーム会議」(リーダー:小池百合子東京都知事)をオンラインで開催。この中で各都道府県による国産木材活用事例が紹介された。従来の活用例にとらわれない“ご当地”ならではのユニークな事例も見られた。
同会議では、「国産木材の需要拡大に向けた提言」(案)に基づいて、木材の積極的な活用を推進することを確認。地域の特性に応じて、①民間非住宅建築物の木造化・木質化の推進、②公共建築物の木造化・木質化に伴う財源の確保、③大規模な木造建築物の設計や施工を担う人材(建築士)の育成、④外国産木材国産木材への転換促進、⑤花粉症対策の推進―などに取り組む。
各地の事例―鳥取県は木塀設置を促進
鳥取県では、木塀やウッドデッキの設置を促進する事業に力を入れている。木塀のデザインコンテストを実施するほか、PR冊子「木塀・ウッドデッキのすすめ」を発行し、優れたデザイン事例を県民に紹介。木塀の設置にも活用可能な補助金制度を実施している。県内産の木を使った新築・改修を支援する「とっとり住まいる支援事業」では、伝統技能である「手刻み加工」「下見板張り」「木製建具」「構造材現し」を活用した工法を採用した場合にも、定額の補助金を支給している。
福島県では、国内での需要が少なく、価格の低迷に悩む大径材(末口径30cm以上)の需要拡大につながるサプライチェーン構築を目指している。同県では人工林面積の約6割が51年生以上となったことから、木材の本格的な利用期を迎えている。そこで県内の木材関係団体などを対象にとした支援事業を実施。大径材を製品にするための一次加工(乾燥)の経費に対し、補助を行っている(1m3当たり5000円)。加工された製品は都市部の非住宅建築に使用されるほか、海外にも輸出されている。大径材の活用については、栃木県が「とちき材」の半製品として輸出するトライアルを実施している。
東京都では、民間住宅への国産木材の利用促進するため、国産木材の使用量に応じて東京の特産物と交換する「木材利用ポイント事業」を実施。2023年秋から新築住宅に加えて、リフォームもポイント交付の対象とする。他に中・大規模建築物の木造木質化を推進するため、設計費・建築費への補助を実施(設計費:最大5000万円、建築費:最大5億円)。国産木材を使用した建物がスプリンクラー設置する際にも最大2625万円の補助を行う。
■全国知事会で配布された「国産木材の需要拡大に向けた各都道府県の取組事例集」
木造に精通した建築士の育成も
木造・木質化に精通した建築士を育成するための講習会や研修なども全国各地で行われている。例えば、群馬県では「中大規模木造建築マイスター養成講座」を開催。大学教授や専門家を講師に招き、意匠や構造、防耐火などの講義を行っている。石川県では座学だけでなく、実物大トラスの組立て、荷重による破壊試験などの実技研修も実施している。静岡県では非住宅木造建築物の設計者を確保するための講習会「ふじのくに木使い建築カレッジ」、三重県では1級建築士を対象とした「中大規模木造建築設計セミナー」を開催している。
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