リガード(東京都国分寺市)は、経験のなかった注文住宅事業に参入し、断熱・気密・耐震・デザインを極めた “ 高付加価値な住まい ” を年60棟手がける体制を最短で確立した住宅会社として知られる。10年先を見据えてアフターサービスにも早くから着目、2017年からアイジーコンサルティング(静岡県浜松市)と協業してアフターの拡充を進めている。内藤智明社長にアフターに対する考え方、判断軸を聞いた。
【聞き手:アイジーコンサルティング 瀧澤幸也、井上元太】
――リガードさんは内藤社長が12年前に仲間と立ち上げた会社なんですね。事業を行ううえで大事にされていることは何ですか?
僕と、前職で不動産仲介のトップセールスだった専務、一級建築士の3人で起業した、不動産色の強い会社として2011年3月に営業をスタートしました。
短期的に収益を確保するなら土地活用提案や不動産仲介でよかったのですが、東日本大震災直後のあの停滞感のなかで、人口も着工も縮む未来を見据えた時に「“付加価値”のある商品・サービスでなければ勝ち抜けない」と痛感。じゃあ、不動産・建築の領域で先行投資が少なく、付加価値を追求できる事業は何か?と考えたら「受注生産のものづくり」に行き着いた。だから何よりも大事にしているのは付加価値です。
営業開始から10カ月後の2012年1月にはもう「これからは注文住宅で行く」と決めていました。
――未経験だった注文住宅事業に踏み出し、短期間で目を見張る成長を遂げています。
文字通り一から勉強しました。全国の工務店さんを飛び回って教えを乞い、まずはローコストの注文住宅からスタート。最初の1棟を受注するまでに10カ月かかりましたが、1年後には20棟、2年後には30棟の受注ペースを掴み、お客様にもとても喜んでいただき、側から見ると順調そのものだったかもしれません。
ただ、僕としては、まだ自分が納得するレベルの付加価値を追求できていない、これでものづくりと言えるの?という思いがありました。
そこで、もう一度全国の優良工務店さんに学ばせてもらいながら住宅の性能・デザインのレベルを積み上げ、2016年には完全に性能とデザインと暮らしやすさに振り切った “本質的なものづくり” にシフト。同時にギアを一段上げ、40棟、50棟と受注を拡大する道を選びました。
――性能・デザインに舵を切った翌年の 2017年から、当社の「アフター管理サポートサービス」を導入していただいています。当時のアフターの状況を振り返ると?
当時は、注文住宅を始めてまだ5年と、オーナーさん宅の数がそこまで多くはなく、最初の物件がリフォーム適齢期を迎えるまでの猶予もかなりあったので、一級建築士資格を持つ起業メンバーの1人がお客様から困り事の連絡が来たら都度対応していました。受け身的かつ属人的ではありましたが、お客様との関係は良好でクレームもないため、当時の僕らにとってアフターは喫緊の課題ではなかったんです。
ただ、受注棟数が年30棟を越すとさすがに1人では厳しいよね、と。そんななか、工事部長が見つけてきたのがアイジーさんのアフター代行の外注サービスでした。
――なぜアフターを外注化しようと?
アフターに限らず、あらゆる判断で常に心がけているのは目先のことではなく、10年後、20年後も生き残れる選択はどっちなんだ?ということ。
その観点から言うと、当社なりのアフターの“型”はあった方がいい。でも当時は、性能、デザイン、ホスピタリティと他に付加価値を上げたいポイントがあり過ぎて、自前でアフターを徹底する余力がなかったし、無理をしても続かないことは経験から知っていました。ならば、外注という選択肢もありなのかな、と。
とはいえ、社名のリガードには「気遣い気配り心配りを大事にする」という由来があり、意思決定の際には常にお客様目線で考えることを徹底してきたので、「いくら目の前に理想的なアフター代行サービスがあるからと言って、お客様のためにならない意思決定はしないよ」とあえて社員に釘を刺したんです。
すると、工事部のスタッフが、今後新築棟数が増加した場合のアフター回数の推移を計算してグラフ化し、「10年後には膨大な数になるから今アフター代行を入れたい」と僕を説得してきたんです。その時に、アイジーさんとの協業を決めました。
――現在のアフターの状況、アフター代行を導入した感触を教えてください。
引き渡し後2カ月、1年、3年、5年、10年のアフターをお客様とお約束していますが、このうち2カ月目のみ自社の現場監督が対応し、1年目以降はアイジーさんのアフター代行をお願いしています。
正直、「平均点をとってくれれば十分」くらいの気持ちでしたが、フタを開けてみるとアイジーさんの接客の評判がとてもよく、うれしい誤算でした。お客様に話を聞くと、外周・内部・床下の劣化しやすい箇所を丁寧に点検してくれる上、建具のネジの緩みなど細かな部分にもよく気づいて調整までしてくれるそうです。スタッフ教育がしっかりしている証拠ですよね。
お客様目線で見ても、社内で間に合わせるよりも、接客・サービスのレベルが高いプロの手厚いアフターを受けられた方が明らかにメリットは大きい。今思うと、6年前の起業期~成長期にアフター代行を導入する判断をしたのは大正解でした。
――社内にも何らかの変化をもたらしたのではないでしょうか。
アフターを外注化し、それ以外の付加価値向上に注力できたことで、特にコロナ禍以降、明らかにお客様の世帯年収、リテラシーが上がっています。平均請負単価は、ローコスト時代が1700万円、コロナ前が2600万円、いまは3600万円と当初のほぼ倍に。受注棟数は新型コロナの影響で21・22年は84棟まで増え、今年は60棟ほどで落ち着きそうですが、利益額が上がっているので受注件数はこれで十分。本社のある国分寺で60棟、もう一拠点ある練馬で24棟くらいが適正規模かなと考えています。
現在は提供するプロダクトやサービスも“質の追求”に完全にシフトし、社内のDXやマネジメントも質重視に変えました。3人で始めた会社がいまや50人を超えましたから、もはや完全に別会社です。
――付加価値を追求する内藤社長からするとゆくゆくはアフターを内製化して収益化する仕組みをつくりたい、と考えていらっしゃるのかなと思うのですが。今後目指すアフターの形とは?
住まいの困り事が出た時に、「とりあえずリガードに相談してみよう」とポジティブに思ってもらえる関係づくりを未来永劫続けることが紹介やリピートにつながると考えています。その関係性をいかにつくるかがアフターのテーマですね。
今やろうとしているのは、定期点検とは別に、「その後どうですか?気になったので連絡してみました」とか「近くに来たからちょっと寄ってみました」のような、何気ない、でもお客様の記憶に刻まれる距離感、存在感のアプローチを仕組み化すること。やり切るのは大変ですが、付加価値を極めるって結局こういうことの積み重ね。これからリノベーション事業を加速させる予定なので、アフターから紹介へのルートはより重要になってくると思います。
10年間の点検も、本来は毎回工事を担当した現場監督が行くのが理想なのでしょうが、今のようにアイジーさんと協業しながらアフターの質を高める道を模索してもいいんじゃないかな、と。例えばアイジーさんの点検時にうちの現場監督が一緒に訪問して点検箇所や役割を分担する “ アフターの分業 ”もひとつの正解だと考えています。そして、「受注の8割は紹介客」というレベルに早く到達して、20年後、30年後にはオーナーさんの子や孫にリガードで家づくりをしてほしい。それが僕らが目指す究極の世界です。
(sponsored by アイジーコンサルティング)
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