松尾和也さん流エコハウス設計メソッドを毎月10日号でお届けする本連載。
今回は「基礎断熱における床下の結露リスク」が本当なのか、計算をもとに考えます。
「基礎断熱は床下の結露が怖い」。この単純な思い込みだけで、基礎断熱化に踏み切らない方が多いと感じています。しかしながら、2000年に発表された「地盤防湿処理のある住宅床下空間の温湿度性状に関する研究」(以下「論文①」)、および2011年発表の「実験棟実測による住宅の床下温湿度性状に関する研究」(以下「論文②」)でも明らかにされているように、床断熱の床下は極めて高湿になっています。
論文①では「月平均相対湿度は夏季にはほとんどの住宅で80%を超えている(床断熱)」とあり、同時に「カビの発生は空間湿度80%以上が条件となっている」とも書かれています。それとは別に、私の知人でカビの駆除を専門に行っている専門家がいます。この知人によると「70%以上の時間が3日以上続くとカビが発生しやすくなる」と言われています。
いずれにしても「結露したらカビが発生する」と思いこんでいる人が多い中、それよりはるか手前の条件からカビは発生してくるということがご理解いただけるかと思います。専門家の間では「基礎断熱の結露リスクが床断熱を上回るのは1年目だけで、2年目以降は生涯にわたって基礎断熱のほうが低リスク」というのは常識のようになっています。
昔の家は、今より夏の外気温がずっと低い状態にあり、冷房を使う頻度も今よりずっと少なかったのです。この2点の組み合わせの場合、現在の床断熱住宅で起こるトラブル(床下での結露、カビの発生)は今よりずっと少なかったと考えられます。温暖化によって夏暑くなったことで・・・
この記事は新建ハウジング7月10日号6面(2023年7月10日発行)に掲載しています。
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