国土交通省は6月30日、2023年版「国土交通白書」を公表した。今回のテーマは「デジタル化で変わる暮らしと社会」。国土交通分野でのデジタル化のほか、デジタル化がもたらす新しい暮らし方、国土交通行政の動向について紹介している。住宅関連では3Dプリンタを活用した建築技術(太陽の森ディマシオ美術館)、データ駆動型スマートシティ(富山市)を話題として取り上げている。
同省では、デジタル化への期待感について国民意識調査を実施。デジタル化への考え方について尋ねたところ、「デジタル化は私たちの日々の暮らしを便利に豊かにする」と答えた人が、いずれの年代も約8割を占めた。
分野別では、▽オンライン行政手続や電子証明▽災害の激甚化・頻発化への対策▽AI・ドローンを用いたスマート農業▽オンライン診療や電子カルテ▽新たなモビリティや交通システム▽無人搬送車などロボットの導入―などへの期待度が7割以上と高かった。
さらに若年層では、「新技術(3Dプリンタなど)を活用したデザイン性の高い空間の創出」「研究機関との連携やスタートアップの育成によるイノベーションの創出」に期待している人の割合が約7割に達している。
このうち3Dプリンタを活用した建築技術として、太陽の森ディマシオ美術館内に建築されたグランピング施設「DI-MACCIO GLAMPING VILLAGE」を紹介。国内初の試みとなるこの施設は、鉄筋コンクリート造の卵形の建物で、特異な形状やテクスチャーが3Dプリンタによって忠実に再現されている。オープンからわずか4カ月間で200人以上の宿泊者が訪れた。
10代は「バーチャル充」に期待
デジタル化による実現が期待される「2050年の新たな社会像」については、▽災害リスク管理が高度化し、災害から人命と暮らしが守られる社会▽個々のニーズに合ったサービスが受けられる社会▽住む場所や時間の使い方を選択できる社会―を望む声が多かった。10代ではバーチャル空間の充実により、物理的な制約を受けずに活動できる社会への期待が高まっている。
デジタル化が進んだ将来の居住地については、「日常の買物の利便性」「生活コストが安い」「公共交通の利便性」「病院や介護施設、公共施設が整っている」などの意見が多かった。生活コストの安さについては地方圏の方が優位にあり、デジタルを活用した地域活性化が今後進むと予想される。
デジタル化を通じたコンパクトシティ(データ駆動型スマートシティ)の実例では、富山市を紹介。同市では約100施設の公有財産に無線通信技術LPWA(Low Power WideArea)を設置し、市域の98.9%をカバーする「富山市センサーネットワーク」を整備している。取得・集積したデータは市民情報サイトで公開され、河川水位情報、道路工事・通行制限情報、消防車両出動情報、行政窓口の混雑情報などとしてリアルタイムに提供されている。さらにビッグデータとして解析・活用することで自治体業務の効率化を図っている。
住宅ビジネスに関する情報は「新建ハウジング」で。試読・購読の申し込みはこちら。