建築家・坂茂氏が設計・デザインし、“透明なトイレ”として注目されていた「代々木深町小公園トイレ」(富ヶ谷1-54-1)および「はるのおがわコミュニティパークトイレ」(代々木5-68-1)の運用について、東京都渋谷区は6月22日、秋から初夏にかけてトイレの壁を常時不透明な状態にする方針を明らかにした。気温が下がる冬季の利用時に、ガラスが不透明にならなくなる不具合が生じたことに対して対処したもの。
同トイレの管理を行う「THE TOKYO TOILET維持管理協議会」によると、これらのトイレのガラス壁は通電時に透明な状態となる仕様となっており、鍵を閉めた時点で通電が解除されて不透明になるという。ところが気温が下がると壁内に含まれた透明・不透明化を作り出す粒子が固まりやすくなる特性があったことから、寒くなると不透明化に時間を要するようになり、通常利用に支障を来すようになっていた。
そこで同協議会では利用者がいない間、自動的に通電と解除を繰り返す機器を設置。これにより粒子が固まらないようにしていた。ところがそれを見た利用者が、数分おきに透明・不透明が繰り返される不具合だと捉え、それが報道により広まったことで不安の声が高まる結果となった。今後の方針として、5月中旬から10月中旬までは利用時のみ不透明に切り替わる運用を、10月中旬から5月中旬までは常時不透明での運用を行う。
渋谷区は同件について「このトイレの特徴である透明・不透明の機能を体験できない期間があることは残念だが、通常の公共トイレとしての利用には問題はない。引き続き利用者が安心して利用できるよう、気温が低下する期間の動作確認・検証を進めていきたい」とコメントしている。
トイレ管理は渋谷区に移管
両トイレは多様性を受け入れる社会の実現を目的に、東京都渋谷区内17カ所の公共トイレを更新するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」(2020年~)により設置されたもの。坂氏のほかに、安藤忠雄氏、伊東豊雄氏、隈研吾氏ら16人の建築家やデザイナーが参加。設計施工には大和ハウス工業、現状調査や設置機器・レイアウトの提案にはTOTOが協力している。管理は日本財団・渋谷区・渋谷区観光協会で構成される「THE TOKYO TOILET維持管理協議会」が行う。2023年3月にすべてのトイレの設置が完了したため、2023年度末にはトイレの維持管理が日本財団から渋谷区へ移管されることが決まっている。
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