真実は現場にあり―。“素足で歩ける現場”を標榜するのは、富田製材(岐阜県富加町)だ。年間を通じて、まるで「ショールーム」のように進行中の現場を魅せる。建て主や生活者に広く開放し、安心感や品質力をアピール。営業担当者ゼロという社内体制でも、長年にわたって安定的な集客と紹介受注を実現している。
「現場をきれいに保つことは、工務店として当たり前。例えば、100円の商品を売っているお店でも、売り場はきれいにしていて当たり前なのに、何千万円というお家の現場が汚れているのは、絶対あってはならないこと」。
創業93年。「本物の木の家」として地域に根差した家づくりをする富田製材社長の酒向和幸さんは力を込める。
同社は約10年前から「現場きれい」に取り組んできた。現場をきれいにすることで安全や品質を向上させる。丁寧な仕事をしていくことや職人のマナー向上を通じて「魅せる現場」を実現する―。全国の工務店による団体・住宅産業塾(運営:日菱企画)が提唱するものだ。同社はそれを「トミタスタンダード」とし、試行錯誤しながら仕組み化した。先駆者として取り組んできたHORI建築(京都府福知山市)などをベンチマークにするほか、同会で「魅せる現場」に取り組む工務店への視察会や交流を通じてノウハウを吸収していった。
クレームがきっかけ“負の連鎖”を断ち切りたい
なぜ「現場キレイ」に取り組むようになったのか。酒向さんは15年以上前のクレームが契機だと明かす。
「左官が手がけた犬走りの仕上げが粗く、建て主から指摘が入った。やり直ししたものの、それでも納得のいく形にならず…。結局、はつり取るしかなかった。何よりそのクオリティーで良しとする職人の意識や、私自身がチェックすることのできなかった社内体制そのものが、まずいと思った」。
当時は受注にも苦しみ、負の連鎖だった。そこから、全ての工程を徹底的に見直し、現場の標準化に取り組むことに。その過程で出会ったのが、住宅産業塾の「魅せる現場」だった。酒向さんは・・・
続きは「工務店のための危機突破読本2023」P38〜
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