帝国データバンクは6月21日、「企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みに関する動向調査」の結果を発表した。
この調査は民間企業のDX利用実態を把握すべく、DXへの対応状況について、個別にヒアリングできている12万5242社を自社データベースから抽出。そのうちDXに対応していると回答した企業2万548社を分析対象とし、売り上げ規模や従業員数、主な業種のほか、人手不足下における対応状況について調査・集計した。
DXへの取り組み状況について、「すで対応している」企業は全体で16.4%にとどまった。そのうち、専門部署を置いている企業は3.5%だった。
「すでに対応している」企業の割合を売り上げ規模別にみると、売上高が「100億円以上」では50.0%と半数にのぼった。以下、「50億~100億円未満」が33.6%、「30億~50億円未満」が27.3%、「10億~30億円未満」が19.7%、「10億円未満」が9.1%と続き、売り上げ規模が小さくなるほどDXへの取り組みが進んでいない。「100億円以上」の企業で専門部署を置いているのは19.8%で、他の売り上げ規模と比較して10ポイント以上高かった。
従業員数で見ても「1001人以上」の企業では3分の2がすでに対応しているが、「20人以下」は1割に届かず、従業員が多い企業の方がDXへの取り組みが進んでいる。
業種別にみると、「すでに対応している」と答えたのは「銀行」が82.1%と突出して高く、専門部署があるのも66.3%と非常に高い数字となった。次いで、総合商社や貿易商社などを含む「各種商品卸売業(従業者100人以上のもの)」が61.3%、「民間放送業」が57.1%、「国内・国際電気通信業」が53.0%、「高等教育機関」が49.5%、「ソフトウェア業」が48.4%と続いた。
また、各社の人手不足状況との関係を調べたところ、正社員が「不足」と考えている企業の26.5%で対応が進んでおり、人手が「適正」という企業より5.1ポイント高く、人手不足をDXで補完する傾向が垣間見られた。
具体的な現場の事例も調査し、専門部署を置いておらず、従業員10~50人未満の一般土木建築工事業の企業によると「建設現場のICT化に取り組んでおり、この後専門の人材を育成していく方針としている。建設現場に人手不足問題があるため、これまでの汚い・きついのようなイメージをなくすために、実はシステム技術 (ICT分野)というものもあるというイメージをもっと作りたいと考えていた。具体的には、関連会社として人材派遣・紹介を行う会社を設立し、雇用の多様化を目的として、建設業のいわゆる『3K』というイメージを無くすために、ICT分野における技術者として人材が採用できるようにした」という声も聞かれた。
世界的にAI(人工知能)が急速に発展する一方で、2022年の日本のデジタル競争力は前年から1つ順位を下げて63カ国中29位となり、過去最低を更新した(IMD、『世界デジタル競争力ランキング2022年版』)。今後は政府による中小企業への支援策とともに、中小企業はデジタル人材の確保に加えて、リスキリングなどを通じて既存従業員のデジタルスキル向上や、社内全体の能力向上に関する施策を実施することが肝要となる。
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