中小企業庁が6月20日に公表した価格交渉・価格転嫁に関する調査結果によると、「建材・住宅設備」では7割が発注企業側との交渉が進み、このうち半数以上が実際に価格転嫁に応じてもらえたことが分かった。この調査は毎年3月と9月に設定している「価格交渉促進月間」の期間中に実施したアンケート調査(回答数1万7292社)および下請Gメンによるヒアリング(電話調査2243社)の結果をまとめたもの。発注側企業が下請けの中小企業に対し、原材料費やエネルギー価格、労務費などの上昇分を価格転嫁できているかなどについて調べている。
全産業では、「価格交渉を申し入れて応じてもらえた」「発注側からの声掛けで交渉できた」割合は63.4%で、昨年9月の前回調査から5ポイント増加。コスト全体に対する転嫁率の平均は47.6%だった。このうち「高い割合(10割、9割~7割)で価格転嫁できた」のは39.3%で3.7ポイント増えている。一方、「全く価格転嫁できていない」「減額された」割合も23.5%と増加傾向にあり、二極化が進行している。
価格転嫁ランキングは住宅設備5位・建設19位
発注側企業が価格交渉に応じた業種のランキングでは、「建材・住宅設備」が前回調査の11位から5位に上昇。「建設」は19位で前回と同順位だった。また交渉後、実際に発注側企業が価格転嫁を行った業種のランキングでは、「建材・住宅設備」は前回調査の5位から7位に転落。ただし、転嫁率は53.2%で前回調査から0.5ポイント増えている。「建設」は13位から16位に転落し、転嫁率も43.5%に下がった(前回は44.6%)。中でも原材料費・労務費の減少が目立っている。
業種別の下請Gメンが収集した事業者の声では、「建材・住宅設備」は「価格交渉を申し入れて応じてもらえた」「発注側からの声掛けで交渉できた」企業の割合が72.3%に。転嫁率は53.3%で、このうち「高い割合で価格転嫁できた」は46.2%と、全産業の平均よりも高くなっている。「全く価格転嫁できていない」「減額された」は15.9%だった。
個別意見では、「取引先もコスト上昇に対して十分に理解を示しており、自社の要望はほぼ認められている」「すべての費用を価格転嫁できている」「値上げを認めてくれないどころか、原価低減要請をしてくることがある。数年前から取引額を減らすようにしている」などがあった。
下請振興法に触れる“脅し”も
「建設」は、「価格交渉を申し入れて応じてもらえた」「発注側からの声掛けで交渉できた」企業の割合が58.8%、転嫁率は44.3%。このうち「高い割合で価格転嫁できた」は37.0%で、いずれも全産業の平均を下回った。一方で、「全く価格転嫁できていない」「減額された」は24.3%と、全産業平均よりも高かった。
個別意見では「賃金アップ分の価格改定ができた」との意見がある一方、「交渉をしたところ値引きを強要されて発注も一切止められた」「価格交渉の協議にすら応じてもらえないだけでなく、支払いも止められそうになった」といった企業もあるなど、2022年に改正された「下請中小企業振興法」に触れる内容も見られた。
同法では、▽労務費、原材料費、エネルギー価格などが上昇した下請事業者からの申し出があった場合、遅滞なく協議を行うこと▽下請事業者における賃金の引上げが可能となるよう、十分に協議して取引対価を決定すること▽取引上の交渉の際に威圧的な言動による交渉を行わないこと―などを定めている。
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