住まい手の快適な暮らしを実現する高断熱高気密住宅が全国的に普及し、住宅の長寿命化も進んでいる。一方で、高断熱化によって室温が上昇したためにシロアリ被害の報告も増加している。高断熱高気密住宅における蟻害対策と防蟻の重要性について、ZEH推進協議会の宜野座俊彦理事、リベスト(岩手県奥州市)執行役員設計部長の佐々木大輔さん、防蟻製品を扱う九州テクノ工販の川尻邦久社長に話を聞いた。
高断熱高気密住宅に寄せ付けない環境を構築
―高性能住宅における蟻害リスク上昇と対策をどう考えるか。
宜野座 2021年に「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が設置され、30年までに省エネ基準がZEH水準の省エネ性能に引き上げられる予定だ。当協議会としては、カーボンニュートラルに向けて、断熱・気密性に優れ、再生可能エネルギーを、自家消費も含めて最大限活用できる住宅をより多く供給していくことを使命としている。
一方で、高断熱高気密住宅の普及に伴い、シロアリの被害も増加しているという。シロアリは太平洋側の暖かい地域に生息しているイメージかもしれないが、近年、地球温暖化が進行し、さらに住宅の高断熱化も進んだために生息地が北上しており、基礎の断熱材の中に生息している事例さえある。優れた住宅を長持ちさせるためにも、木材の劣化を防ぎ耐震性を維持する防蟻処理は重要な要素だ。
川尻 高断熱高気密住宅におけるシロアリ対策は、開口部や断熱、気密や換気と並んで重要だ。せっかく断熱等級や耐震等級の高い住宅でも、シロアリの害が構造材に及べば、構造の強度は低下するし、耐久性にも直結する。
国内では、水溶性の防蟻薬剤(ネオニコチノイド系)を使用した薬剤散布や加圧注入工法などが一般的だ。しかし、竣工した建物を、この方法で再度処理することは現実的ではなく、基礎内への薬剤散布に頼ることになる。しかし床下空間を利用する全館空調・換気を採用すると、家全体に薬剤の影響が及びやすい。
住まい手のためにも、これからのシロアリ対策は忌避性、つまりシロアリを寄せ付けない“一次対策”に切り替えるべきだ。基礎下に防蟻防湿効果がある「ターミダンシート」を敷くと、シロアリが触れた際、防疫殺虫効果があるビフェントリンが機能して、仲間に危険性を伝える警報フェロモンを発生し、他のシロアリが近寄らなくなる。シロアリは地中から基礎下の砕石に溜まる水を求めて集まるため、寄せ付けない環境づくりは効果がある。
佐々木 弊社は岩手県内で事業を展開しているが、県内の住宅事業者の防蟻に対する意識は低い。目立ったシロアリ被害が発生していないことが原因だろう。一方で・・・
この記事は新建ハウジング6月30日号13面(2023年6月30日発行)に掲載しています。
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