前稿(5月30日号)で、ドイツのように物価も建物の品質スタンダードも高い欧州の先進国では、高価な「持ち家」購入の頭金の確保が大きなネックとなっていて、大半の世帯が、自己資本が足りないために、その夢を実現できない状況であることを説明した。ドイツの持ち家率の現状も、50%を若干下回るEUの最下位である。
本稿では、「持ち家」の夢が叶わない人たちが、どのような賃貸住居に住むことができるのかについて、日本との比較もしながら論じたい。
まず、持ち家と賃貸住宅の間で、その性能やクオリティに大きな相違がなければ、資産が少ない世帯が、無理して自己資本を工面して持ち家を購入する必要はなくなる。ドイツでは、どのタイプの住宅にも、同様の耐用年数、温熱性能、防火や防音などの性能が求められている。本連載で紹介した「省エネ規制」も、持ち家でも賃貸アパートでも、同様に適用されている。
また、シングルから大家族、若い世代から高齢者まで、様々な人たちのニーズに応えられる多様なバリエーションの賃貸住宅がある。持ち家を建てたり、購入したりしなくとも、一定レベル以上の多様な賃貸住宅で、多様な人々の居住のニーズを満たすことができる。
持ち家率が約68%と高い日本では、住む人々、とりわけ子育てする世帯のニーズに応えられる賃貸住宅が少ないため、家を建てるという選肢しか残らない、という状況が数十年前からある。
ドイツでは、住宅は持ち家でも賃貸アパートでも、長期的な資産として建設されている。適切に維持メンテナンス、リフォームされていれば、資産価値は基本的に下がらない。融資する銀行が用いる住宅の減価償却期間(耐用年数)は、平均80年である。
高性能アパートに投資家も熱視線
日本では・・・
この記事は新建ハウジング6月30日号6面(2023年6月30日発行)に掲載しています。
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