“ いつまでも強く、いつまでも快適に ” をコンセプトに、約30年前に「カネカのお家 ソーラーサーキット」を導入し、人と建物の健康にこだわった家づくりを続けてきた大東住宅(宮城県仙台市)。健康への思いとソーラーサーキットの技術を組み合わせることで差別化とブランディングを進め、競合ひしめくエリアで確かな支持を得ている。高橋一夫社長に話を聞いた。
1995年にソーラーサーキット工法に出会い、自社の家づくりに採用してもう30年近くになる。それ以前は、県産スギのログハウス建築を手がけていた時期もある。だが品確法以降、ログハウスとは真逆の高断熱・高気密住宅が勢いを持ち始めたこと、さらに以前から寒さ・暑さ・結露・カビに悩まされた挙句20-30年で寿命を迎える日本の住宅に疑問を抱いていたことが引き金となり、事業を再考。
“住む人の健康と住まいの健康 ”を志すなかで、開放型のログハウスと閉鎖型の高断熱・高気密住宅のミックスとも言えるパッシブ建築に可能性を感じ、行き着いたのが“断熱・気密・通気・換気 ”という異なる性能をあわせ持つソーラーサーキットだった。ナイチンゲールの『看護覚え書』にある“病の半分は空気の汚れと体の冷えによって引き起こされる”という一文も、ソーラーサーキットで解決できると感じた。まさに、高橋社長が求めていた技術そのものだったという。
外断熱と二重通気の力
「ソーラーサーキットの家は理に適ったテクニカルな技術がたくさん詰まっており、30年近く向き合ってもなお変わらない個性と魅力がある」と高橋社長は話す。なかでも、独自の“外断熱 ”と“二重通気 ”は、人と建物の健康を支えるうえでなくてはならない特別な技術だ。
「外断熱の最大のメリットは、外気温の影響をシャットアウトして寒さ・暑さと熱橋による熱損失や結露・躯体劣化のリスクを解消できること。基礎も外断熱なので、真冬でも床下が15℃近辺で安定しており、床面が冷たくないので、年中裸足で過ごせるのも大きな魅力。床下、小屋裏が屋内空間となるので、小さく建てて大きく暮らせるメリットもあります」。そして夏の快適性と省エネ、建物の耐久性に大きく関わってくるのが、壁内の通気を制御して住まいを衣替えする「二重通気」のメカニズムだ。
「冬は壁内通気を止めて屋内を暖かく保ちますが、夏は壁内を通気させて熱・湿気を小屋裏から逃がします。この二重通気と外断熱が組み合わさることで、壁内・天井裏が過熱したり、室温が外気温を上回ることがなく、冷房負荷を低減。オーナーさんの中には扇風機だけで快適に過ごす人、盛夏でもわずかなエアコン冷房で暮らしている人が少なくありません。“通気 ”こそもっと注目されていい技術だと思います」。
また、ソーラーサーキットを取り巻く技術、建材設備の進化も実感しているという。「外断熱・二重通気工法だけでなく、通気の自動制御、全館除湿、全館空調、薬剤不使用の防蟻工法、太陽光発電システムと、蒸暑化やライフスタイルの変化に応じて進化しており、かつ理にかなっている。どんな質問がきても明確な根拠に基づいて答えられる強みがあります」。
変わらない性能を証明
30年近く前にソーラーサーキットで自宅を建てたお客様に住み心地を聞くと、必ずと言っていいほど「住み始めてからずっと快適性が変わらない」と答え、顧客アンケートでも大多数のお客様が「住み心地に満足している」と回答している。
驚くべきことに、築15年を超えたモデルハウス2棟の気密測定を最近したところ、C値がほぼ変化していないことがわかった。(建築当初0.1だったのが16年後に0.3、建築当初0.3だったのが17年後に0.4*)。2棟とも2011年の東日本大震災、2022年の福島県沖地震(いずれも宮城県で震度6強を観測)を経験しているにも関わらず目に見える損傷がなく、今回の気密測定により躯体の劣化が極めて少ないことや気密施工の耐久性の高さ、建てたときの住宅性能が長く続く住まいであることも身をもって証明した。
*測定値の一例であり、保証値ではありません。
暮らしのマイスターとして
だが、同社が伝えたいのは性能値だけではなく、暮らしの本質に関わる住みこなし方だという。「設計・職人が一体となって健康でストレスフリーな住まいをつくり、住まい手にはその家で得られる価値をよく理解して愛着をもってもらい、引き渡し後は“暮らしのマイスター”として住まい手と一緒に家を労わり守り続けるのが理想のあり方」。
引き渡し1年目はお客様宅を3回訪問して住み心地を観察するとともに、設置した温湿度計のデータから温度ムラのない暮らし方やエアコンの最適な運転方法をアドバイス。ソーラーサーキットのパフォーマンスを最大限に感じてもらえるよう常に気を配り、住んでからの満足が長く続くための努力を惜しまない。
座学と体感宿泊の両輪で
集客・受注に向けた取り組みも工夫している。高橋社長が接客する場合は、15年前に建てたソーラーサーキットの自宅での住み心地や実測データを交えながら、寒さ暑さに起因する不満が減り家族仲がよくなること、家事楽設計により毎日のストレスが軽減されること、ぐっすり眠れること、暖冷房や消臭剤の出費が抑えられること、さらには30~40年先の健康やお金のことなど話題が多岐に渡るため、フィーリングが合えばこの時点でほぼ契約が決まるケースもある。「夏のオーバーヒートや夏型結露など以前ならマニアックとも思える情報を知っている方が増え、そうした問題の突破口としてもソーラーサーキットを提案する意義は増えている」と話す。
最近は、住宅性能だけでなく、サステナブル、カーボンニュートラルといった環境への意識の高い若い顧客層も増えており、「国産材と外断熱で家をつくることが一番のSDGsにつながる」といったアピールも差別化になっていると実感しているという。
一方、性能値以上の住み心地を“試住 ”する場として体感・宿泊型のモデルハウスを2棟建設。非接触温度計で様々な場所の表面温度を測ってもらうことで温度差のない空間への理解を深めたり、床下構造を見える化してなぜ床面が暖かく裸足で過ごせるかを理論と五感の両方で納得できるような仕掛けを散りばめた。これが営業にも好効果を及ぼしている。
安心・満足のブランドを築く
コロナ禍以降、建築価格は全体的に上昇。ソーラーサーキットはそもそも付加価値の高い住宅で、エリアではやや高額な部類に入り競争も厳しい。だが高橋社長は、人と建物の健康に着目した「ソーラーサーキット×国産材」の家づくりは今後も差別化に有効だと見ている。
「健康、快適、長持ち、省エネ、脱炭素など価格以上の価値を提供している自負があるし、『意識の高いお客様』ほど私たちの想いと価値を理解して、納得して頂いていると感じています」。人と建物の健康にこだわった家づくりを長年続けてきた結果、“大東住宅に頼めば安心・満足 ”のブランドを確立した同社。現在はこれを一歩進めて、大手ハウスメーカーと競合しても選ばれる、「意識の高い顧客層」に向けたブランディングに取り組んでいる。リソースをSNSによる情報発信やイベントに集中し、地元の女性起業家とコラボしてワークショップやマルシェ、ヨガ教室を開催するなど、これまで出会わなかった顧客との接点をつくり、受注や紹介につなげる挑戦だ。年30棟の注文住宅を50棟まで増やし、仙台圏での存在感を確かなものにしたいという。
※カネカのお家、ソーラーサーキット、外断熱・二重通気工法は株式会社カネカの登録商標です
(提供:カネカソーラーサーキットのお家)
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