地域工務店がリノベーション事業に参入する際に、売却型のリノベーションのモデルハウスを開設するケースが増えてきています。ただし、モデルハウスが部分最適であり、集客装置としてモデルハウスが全くと言っていいほど機能しないケースもあるようです。
集客面で機能していない主な理由は2つあり、モデルハウス自体の存在意義が明確でないこと、次にその存在意義にフィットしたアウトプットが構築できていないことがあげられます。
事業化の一つの要素としてモデルハウスが機能しているケースでは、言うまでもありせんが、モデルハウスを業績向上のトップラインである集客起点という位置づけにし、セオリーに沿った販促を徹底しています。
即効性がある集客起点であることを前提に、設定するターゲット層に合った「リアル体感」を訴求すること。即効性を期待するからこそ、オープン時のジャンプスタートも想定した販促企画を立案し、きめ細かく実践しています。
また、モデルハウスで性能向上の理想を追求し、フラッグシップとしての存在に位置付けることも有効です。施主宅の完成見学会では予算の関係で制限もあり、どうしても性能の高低があります。高性能を追求できるのというのはモデルハウスならではと言えます。
「リノベーションでここまでできる」というリアル体感装置があれば、地域における自社のイメージを高めたり、集客面だけでなく、営業面でも強力な武器になったりします。
プロセスにこそ信頼の源泉がある
次に、常設型の自社店舗の存在意義です。集客面では中長期的な効果、または次アポで活用する場という想定が考えられます。
そもそも自社店舗はWEBだけでなく、立地が良ければ店頭看板でじわじわ認知させることができます。認知される接点が増えることで、地域での認知度が高まります。完成後を体感するモデルハウスとの補完的関係も築けるでしょう。「プロセスにこそ信頼の源泉がある」という思いで施工中の情報量を増やし機能している例もあります。
この場合、「モデルハウス(売却型)=リアル体感」、「自社店舗(常設型)=プロセスを学ぶ」という組み合わせになり、まさに相互に補完している関係と言えます。
加えて、「モデルハウス→自社店舗」という2つのステップを経て、建物(店舗)にファンがつくという割合が着実に増えてくれば、一つの仕組みとして機能していると言えます。
さらに、前者はズバリのリノベーション案件を集めるための「マーケティング」の装置であり、後者は世界観を伝え、イメージをつくるための「ブランディング」という位置づけという設定も考えられます。
一方で、役割や存在意義に重なる部分があるのなら(またはあいまいな存在意義のままなら)、エンドユーザーにも伝わりづらく、お互いが機能しないという状況になりかねません。
業績推移のステージごとの出店戦略
リノベーションのモデルハウスが突破口として機能し事業年商3億円を超え、さらに拡大を見込むというようなステージではもう1棟モデルハウスを開設するという案が浮上します。
そして、5億円から7億円というステージに立ってから、組織面の課題解決と同時進行で常設型の自社店舗を旗艦店というかたちで出店するという考え方もあります。
単に店舗だけにフォーカスした論考ではありますが、出店を支える幹部育成を前提にこのようにリノベーション事業の年商ステージごとで的確な出店戦略を打ち出すことも業績拡大の可能性を高めます。案件像に比例して、施主宅の完成見学会の開催数も増えるというグッドサイクルが築ければ、さらに業績拡大が見込めます。
以上、これから何らかの出店を検討しているのでしたら、こうした存在意義や位置づけを言語化し、深く広く考えながら明確にすることが大切です。社内に明確なものがなければ、出店時にオープンイベントを開催し、その結果だけ見て一喜一憂しがちです。
さらに自社にとって象徴的なターゲット像を設定し、その層を常に見据えて販促投資することをおすすめします。ターゲット像は年齢や客単価だけでなく、暮らしに対する価値観まで落とし込めると理想的です。
こうした設定をしないまま販促投資すると、伝える要素がズレてしまうこともありえます。ぜひ、ターゲット層を設定し、それぞれの存在意義に基づいた発信をしていただきたいと考えています。
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