老朽化マンションへの対策について検討する国交省の有識者会議「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」でおおむね意見がまとまった。6月19日にとりまとめ案として公表したもの。同検討会では2022年10月から8回にわたり、区分所有者の責務や管理不全マンションへの対応、タワーマンション特有の課題、マンション建替えの円滑化などについて議論を重ねてきた。
マンションの老朽化と高齢化
築40年以上のマンションは、この15年で約4万戸から約115万戸にまで増加。さらに10年後に約2.2倍、20年後に約3.7倍にまで急増する見込みとなっている。さらに高経年マンションほど区分所有者の高齢化が進行。70歳以上高齢者の割合は、築30年以上40年未満では44%、築40年以上では48%を占める。
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区分所有者の高齢化に伴い、空室や賃貸住戸などの非居住化も進行。マンションでの所在不明住戸の発生も増えている。このために管理組合の運営に支障が生じ、長期修繕計画の定期的な見直しや計画的な修繕積立金の積立もままならないマンションが増えてきた。
区分所有者の責務を明確化
こうした背景を踏まえ、マンション管理の適正化に向けて、区分所有者の責務を明確化することが決まった。マンション施策として、管理組合が区分所有者情報や居住者情報などの把握が容易となる環境を整える。
管理不全となったマンションへの対応では、地方公共団体の権限を強化。「改正マンション管理適正化法」による助言・指導・勧告制度を、地方公共団体が使いやすい内容にする。管理組合法人が空き住戸を取得して活用する場合についても検討する。
「長寿命化減税」で大規模修繕を推進
マンションの長寿命化推進に向けては、2023~2025年度に掛けて実施する大規模修繕工事を行ったマンションに対する固定資産税の減税(マンション長寿命化促進税制)について、区分所有者への周知を行う。修繕積立金の確保に向けては、区分所有者や購入予定者が把握・理解しやすくする。積立金の確保に支障を来す要因となりやすい「段階増額積立方式」から、「均等積立方式」への切替えに対する支援も行う。
管理組合での合意形成が難しく、修繕費が高額になりやすい超高層マンションへの対策も行う。非常用エレベーター、タワーパーキング、免震設備など超高層マンション特有の修繕項目についても現状を把握し対応する。必要に応じてガイドラインの整備なども検討する。
適切な工事の発注・実施に向けては、管理組合が適切な設計コンサルタントを判別しやすくする仕組みを構築。大規模修繕工事を発注する際の相談窓口を設置する。他にも、将来の解体・建替えを見据えた対応(建替え時の住居確保・住み替えなども含む)、マンションの防災、管理組合のDX化なども今後の検討課題とする。
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