積水ハウス(大阪市)は6月9日に公表した統合報告書「Value Report 2023・Our Engagement」の中で、国内5工場(東北・関東・静岡・兵庫・山口)における環境への取り組みを紹介している。
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全工場での取り組みとして、2013年に太陽光発電システム(メガソーラー)を設置。2022年度には使用電力のうち78.7%を再生可能エネルギーで賄った。他に、2025年度中の目標として工場照明LED化率100%(現在約70%を達成)、フォークリフトの電動化率100%、業務用車両のハイブリッド車(HEV)・電気自動車(BEV)化を目指している。
ライン制御にAI活用 荷姿改善で出荷数削減も
東北工場(宮城県加美郡)では、既設の太陽光発電設備に加え、大型蓄電池、ガスエンジン式発電機、プラグインハイブリッド車(PHEV)などを導入。大型蓄電池(2MW級)を活用して、電力のピークカットに努めている。これらの電力は製造時に利用するだけでなく、災害時には避難所の開設などを通じて、地域の安全・安心のためにも提供される。
また製造工程における廃棄物を削減するため3Dスキャナを採用。部品を3次元モデル化し、多方面から解析することで良品率を高めている。
関東工場(茨城県古河市)では、2022年に事務所を「グリーンファーストオフィス」として、ZEB水準に建て替えた。工場では電着塗料の加温・冷却の省エネ制御化、AIを活用した鉄骨部材の溶接ラインの導入により、電力削減を実現している。また出荷輸送時の工夫として、輸送トラック荷台への積載方法を改善。生産時に出荷時の荷姿を意識した形状とすることで、積載効率の向上と出荷台数の削減を図った。
IoT・AI搭載の製造スマートシステム
静岡工場(静岡県掛川市)では、水ストレス地域に立地していることを考慮し、水使用量削減の取り組みを実施。貯めた雨水を排水処理施設で利用している。他に廃棄物排出量の削減への取り組みとして、ラインアウト品専用のリサイクル設備を設置。AIによる厳しい品質検査ではねられた製品を破砕し、遮音床用の充填剤としてリサイクルしている。
兵庫工場(兵庫県加東市)では、高性能コンクリート外壁材「ダインコンクリート」の製造時に使用する蒸気の配管に、稼働停止時に蒸気供給が止まる自動蒸気開閉弁を導入。さらに高効率タイプのボイラーが優先的に運転するよう制御を行うことで、省エネ化を図っている。他にも事務所の屋根に遮熱塗料を塗布することで、夏場のエアコンの消費電力を削減した。
山口工場(山口県山口市)では、IoT技術によりコンプレッサーの運転制御を実施。自社開発の遠隔制御システムでエア使用量を予想し、最適なエネルギー供給を行っている。
また3・4階建て鉄骨住宅向け構法「フレキシブルβシステム」の梁を製造するラインに、IoT・ビッグデータ・AIを搭載した製造スマートシステムを導入。AIが蓄積された過去の製造情報(ビッグデータ)を学習し、製造状況に適した判断を自動で行っている。これにより製造ラインの動作効率化、省電力運転による材料歩留まりの向上、労働時間削減、使用電力量削減などを実現した。
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