政府は6月14日、「第8回技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」を開き、新たな技能実習制度の在り方や検討事項について報告した。2023年秋に提出する最終報告書の取りまとめに向け、今後議論を進める。
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新たな技能実習制度の在り方については、「国際貢献を制度目的とし、労働力の需給調整の手段としてはならない」という本来の目的と、国内企業の労働力として期待される実態とがかけ離れていた点を改善するため、現制度を解消。人材確保と人材育成を目的とした新たな制度を創設する。
具体的な検討事項としては、①外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築、②受入れ見込数の設定の在り方、③転籍(実習先の変更)の在り方、④管理監督や支援体制の在り方、⑤外国人の日本語能力の向上に向けた取り組み―などを挙げた。懸念材料である技能実習生の人権対応に関しても議論の俎上に上がった。
家族帯同など在留資格も検討
①の「キャリアパスの構築」では、外国人がキャリアアップしつつ、日本で就労し続けられる制度を目指す。新たな技能実習制度から特定技能制度への移行が円滑に進むよう、対象職種や分野を一致させる。技能評価を踏まえた活用方策、家族帯同などの在留資格、企業単独型の技能実習制度などについても検討する。
②の「受入れ見込数の設定」では、生産性向上や国内人材確保のための労使団体などの意見を踏まえ、透明性や予見可能性を高める制度とする。人手不足状況、労働市場への影響なども考慮する。
③の「転籍」については、人材確保を主たる目的とした制度にすることも踏まえ、人材育成に由来する制限は残しつつも、従来よりも制限を緩やかにする。その際、受入れ企業などにおける人材育成に要する期間、来日時のコスト、人材育成に掛かるコストなどを考慮する。併せて人権侵害や法違反などがあった場合の救済の仕組み、転籍先を速やかに確保するための方策などについても議論する。
国際標準での人権対応が急務
④の「管理・支援体制」については、優良な団体のみを認める制度に変更。人権侵害などを防止・是正できない、支援を適切に行えない団体や登録機関は適正化あるいは排除する。優良団体に与えるインセンティブについても検討する。
特に人権侵害への対応については、このほど米国務省が「2023 Trafficking in Persons Report(2023年人身売買報告書)」の中で、「技能実習制度の監視・執行手段の実施を強化し、労働者が支払う手数料や手数料が過剰な機関や使用者との契約の解除、法執行機関への労働違反の照会などを行うべき」と指摘していることからも、国際標準での改革が求められる。
⑤の「日本語能力の向上」については、就労開始前の日本語能力が担保されるのに加え、来日後に日本語能力が段階的に向上する仕組みを設ける。▽都道府県などが行う日本語教育の強化▽日本語レベルに対応した教育モデルの開発▽ICT教材の開発・提供▽外国人の社会への定着支援―などを想定している。
併せて、6月9日に改正・閣議決定された「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」の内容に基づき、▽外国人に対する情報発信▽相談体制の強化▽ライフステージ・ライフサイクルに応じた支援―なども包括的に推進する。
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