弁護士・秋野卓生さんが、工務店が知っておくべき法律知識を毎月20日号で解説する本連載。今回は、経営に直結する重要な法改正などの動向を踏まえた、新たな工務店に生まれ変わるためのアドバイスです。
①公正取引委員会による調査票発送
公正取引委員会は2023年5月30日、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に関して、労務費・原材料価格・エネルギーコストなど、コスト上昇分の価格転嫁が適切に行われているかなどを把握するための特別調査として、11万社を超える事業者に対して調査票を発送しました。
現在の公正取引委員会の考え方は、“下請業者から値上げの交渉がなされなくとも、元請業者から年に2回程度、自主的に価格の見直しについて提案しなさい”というものであり、“元請業者から下請業者へのアウトリーチがきちんとできていますか?”という趣旨で調査がなされています。
他方で、元請業者の立場からすれば利益率を確保することが最大の命題ですので、下請業者に「値上げしなくても大丈夫ですか?」と問いかけることなど、ナンセンスだと思われることでしょう。
多くの工務店が「自社の取り組みは、独占禁止法が禁止している優越的地位の濫用にあたります」と法律違反を犯している旨の回答をしそうで、とても心配です。今、WEBセミナーでも、独占禁止法を解説する機会を増やすようにしています。
②法律が大きく変わろうとしている
政府は、6月中に策定する「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」にて、同じ会社に長年勤めるほど優遇される退職金への課税制度を改め、勤続年数による格差を是正する方針を盛り込んでいます。
企業経営者なら、せっかく入社してくれた社員にずっと在籍してほしいと願うものですが・・・
この記事は新建ハウジング6月20日号9面(2023年4月20日発行)に掲載しています。
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