クレジットカード会社、アメリカン・エキスプレスは6月15日、建設・建築業界のバックオフィス、特に経理業務の実態を捉えることを目的とした「建設・建築業界における企業間決済調査」の結果を発表。「2024年問題」と呼ばれる、労働環境の改善が急務となっていることが明らかになった。
建設・建築業界では高齢化や労働人口の減少に伴う人材不足で長時間労働が常態化している。来年4月には「働き方改革関連法」により「時間外労働の上限が規制」「割増賃金引上げ」などが行われ、「長時間労働の是正」「給与・社会保険」「生産性向上」などといった2024年問題に直面している。
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調査は建設・建築業界の経営層や支払い、請求などの経理・決済業務に従事している300名以上を対象に、2023年4月に実施。全体の課題として挙げられたのは、「人材不足」(51.8%)や「労働人口の高齢化」(38.5%)となっており、「人」に関する課題が目立った。
人材不足が課題となっている企業では、専門のバックオフィス部門や担当を置いていない場合も多く見られ、経理に関わる業務時間は月間平均で約107時間となっていることが判明。
請求業務においては、在庫確認や見積もりの作成といった受発注処理業務に12.8時間、請求書の準備に11.6時間かかっているほか、支払いに関しては新規取引審査や経営状況の把握に10.5時間かかっており、人材不足とはいえ毎月経理業務に人員を割かなければならない状態が垣間見られた。
そして、効率化したい決済方法を聞いたところ、「銀行振込」(49.2%)「現金」(42.7%)、「手形・小切手」(32.7%)の順で回答が寄せられ、理由としては「ミスを減らしたい」「面倒だから」「別の業務に専念できるようになるから」という点が挙げられた。
建設・建築業における主な取引先との決済方法については請求・支払いのいずれも、銀行振込が85.1%と、最も多く利用されていることが分かった。
さらに、現金(請求43.0%/支払い62.5%)、口座振替(請求23.3%/支払い47.6%)、手形・小切手(請求26.5%/支払い41.4%)、クレジットカード(請求14.9%/支払い30.7%)と続き、決済方法が多様化していることが分かった。
決済方法を選択する理由として、銀行振込は「いつもこの方法だから」(51.6%)が最も多く、手形・小切手(44.8%)、現金(37.3%)では「取引先にこの決済方法を求められるから」が主な回答。
一方で、口座振替(37.5%)、クレジットカード決済(38.2%)においては、選択理由として「手間が少ないから」が最も多く、本来は効率的な手段を優先して選択したいという意向もうかがえる結果となった。
今後のクレジットカードの支払い利用希望は6割で現状の約2倍。「効率化」はもちろんだが、「ポイントが貯まる」(34.7%)や「振込手数料を減らせる」(32.6%)など、決済以外のメリットも挙げられた。
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