国土交通省は、適正な一人親方の処遇改善と、社会保険加入の規制逃れを目的とした「偽装請負の一人親方」化に対応するため、7月4日から全国10ブロックで「一人親方の適正な働き方に関する説明会」を開く。対象は建設業の一人親方、建設事業者、建設業に関連する団体職員など。一人親方だけでなく、一人親方と契約する企業にも適正な対応を求める。
国交省では、建設従事者の老後の生活やけが・病気時の保障のため、2020年10月から建設企業の社会保険加入を建設業許可・更新の要件としている。しかし、従業員の社会保険加入を逃れるための「偽装請負の一人親方」が、いまだに一定数存在している。
特に問題になっているのは、10代・20代前半で経験年数が10年程度未満、またはCCUSレベル3相当未満の技量の者で、雇用主の指示により独立したものの、社会保険未加入の状態で、賃金や仕事の指示を元の雇用主から受けているケース。他にも、口合わせで社会保険には加入せずに請負契約を結び、会社の備品(ヘルメットやユニホーム、名刺など)を支給されて、「表向きは社員」であるケースもある。このような、本来は労働者として扱うべきである一人親方について、国交省は「適正ではない一人親方」と捉えている。
「適正な一人親方」の特徴を明記
その一方で、事業者性を確立した「適正な一人親方」も存在。国交省では前者との区別を付けるため、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」(2022年3月30日改定)の中で、「請け負った工事に対し自らの技能と責任で完成させることができる現場作業に従事する個人事業主」と定義している。
また望まれる能力として、▽技能として相当程度の年数を上回る実務経験を有し、多種の立場を経験している▽専門工事技術、安全衛生などのさまざまな知識を習得し、職長クラス(CCUSレベル3相当)の能力がある▽建設業法や社会保険関係法令、事業所得の納税などの各種法令を遵守する▽適正な工期・請負金額での契約を締結する▽請け負った工事を完遂する▽他社からの信頼や経営力がある―などを挙げている。
一人親方が成立しやすい住宅業界
住宅業界では、一人で請け負ったとしても成立する工事業種も多い。例えば、①小規模のRC構造物の型枠組立て作業、②小規模な電気工事、③小規模な住宅の管工事、④住宅の外構工事、⑤住宅工事の基礎工事、⑥クロス壁工事や床工事、⑦小規模現場の塗装、⑧少量の整地や土砂の運搬、⑨小規模な左官工事―などは成立する。
能力の高い技能者は、一人で多くの仕事をこなし、より高い収入を目指すことができる。政府が目指しているのは、こうした専門性の高い一人親方の処遇が改善されることだ。説明会では、一人親方が安心して働ける環境整備に向けた取り組みについて説明が行われる。
日程は、▽7月4日さいたま新都心合同庁舎▽7月10日高松サンポート合同庁舎▽7月21日那覇第2地方合同庁舎▽7月28日札幌第1合同庁舎▽8月7日名古屋合同庁舎―で開催。秋には東北・北陸・近畿・中国・九州の各ブロックでも開催。いずれも入場は無料。
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