増税が「脱・住宅貧乏」のチャンスに?
一方で住宅ストックの現状を見ると、住宅の空き家率は13・1%にのぼり、今後新築をこのペースで進めていけば2040年には空き家率が43%に達するとのシミュレーション結果もあります[表]。
空き家の一定数は大型改修・リノベーションを行えば「利用」できるはずです。空き家をリーズナブルだけど付加化価値の高い貸家や中古住宅に変えて提供すれば、貸家も中古住宅も消費税がかからないこともあり、一定の需要は期待できるでしょう。
また、2015年には大きな人口の塊である団塊世代が65歳以上となり、住み替えが活発する可能性があります。彼らは「最後の逃げ切り世代」と言われ、バブル前に住宅を取得し、バブル時に資産を蓄積し、退職金をしっかり確保した後も大半がその後も働いています。しかも年金もきっちりもらうことができる。
団塊世代の一定数は「終の棲家」の住宅投資を行う余裕がありますし、さらに一部は「二地域居住」を実践するでしょう。
将来に不安を抱える団塊世代も、自宅を貸したり売ったりすること=「住宅を年金に変えること」ができます。その住宅を予算に余裕がない若年層に循環させれば、団塊世代と若年層、どちらの「住宅貧乏」も解消できる。理想論ですが、そんなモデルも成り立ちそうです。
このように、住宅ストックを高齢者から若年層へ循環させるなかで「脱・住宅貧乏」を実現する市場のあり方を、本書では「ストック循環型住宅市場」と呼びます[図]。
先に述べた、住宅を代々住み継いでいくような住宅の使い方とあわせ転換が急務で、2015年はその転換の、さらに言えば「脱・住宅貧乏」の最大の、最後のチャンスです。
中古住宅の需要と供給が増える2015年
このように、2015年以降は団塊世代の住み替えで中古住宅の供給量が増える可能性がありますが、他にも供給量が増える要因があります。
ひとつはあまりいい話ではありません。中小企業の資金繰りを支援する「中小企業金融円滑化法」の期限が2013年3月に切れる予定で、その前後で倒産が増える可能性があります。また、消費税増税後はさらに中小企業の倒産が増える可能性がある。その場合、抵当に入れていた経営者の自宅をはじめ金融期間不動産が金融機関を通じて大量に市場に出てくる可能性があるでしょう。
一方、中古住宅の需要も、前述のように生活者の所得・住宅予算の低下、また中古住宅を敬遠しないという価値観の変化、そして仲介であれば消費税の対象外であることなどから、いま以上に増えると見ています。
このように中古住宅の供給と需要が増えれば市場は活性化します。これまで「来る」と言われて来なかった中古住宅の時代がようやく幕を開けるのか―。
ただし、2015年以降、30代の世帯数は急速に減っていく。そうなると、一次取得市場では新築と中古住宅が限られたパイを奪い合うことになります。2015年には新築と中古住宅流通量の規模が拮抗するという予測もありますが、新築の一層のコモディティ化がストック循環型市場転換への阻害要因となる可能性もあるでしょう。
このように、不透明さはあるものの、ストック循環型市場の構築には大きな意義とチャンスがあります。いまこそ本気で考えるときではないでしょうか。
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