「脱・住宅貧乏」2 売りやすく・貸しやすく
もうひとつの方法は、家を売ったり貸したりしやすくすることです。
現在は建物の資産価値は15〜20年でほぼゼロになるのが普通。つまり、建物は財産として機能していないということで、これも「住宅貧乏」の一因になっています。
最も高額な買い物が財産として機能しないのは、本来おかしい。ここが改善されれば、人生の選択肢はもっと豊かに多様になるはずですし、住宅業界にとっても住宅投資額が増える「いい話」です。
新建新聞社では2006年に「住宅は金融商品である」(鵜澤泰功・著)という書籍を出版しましたが、まさに住宅を「金融商品」として機能させるということです。住宅が「貯金箱」になる、と言い換えてもいいでしょう。
先ほどの「脱・住宅貧乏」の解1は、住宅を家族で長く住み継ぐことが前提ですが、解2は住み替えを前提に住宅を取得するということです。また、解1は住宅を「所有」するという日本でも馴染みやすい価値観がベースとなりますが、解2は住宅を「利用」することがベースとなります。
このため、解2を普及するハードルは低くありませんが、住宅を「利用」するものだと割り切れば、ライフスタイルに合わせた様々な暮らし方が可能になりますし、逆に「新築持ち家」から解放されれば、ライフスタイルもより自由になるでしょう。
加速する「住宅貧乏」
今後の住宅市場を考えると、やはり消費税増税が大きな転換点となります(増税をとりまく状況は依然不透明ですが)。
影響のひとつは駆け込み需要とその反動減です。
駆け込み需要の規模は消費増税の実施時期や住宅ローン減税拡充などの緩和策が見えない中では読みにくいですが、新築住宅着工は現在の80万戸から13%程度増の90万戸までは伸びる可能が高いとみます。
その反動減に、2015年から加速する世帯数の減少、特にファミリー世帯の減少や消費税増税による景気の悪化が重なれば、新築住宅着工は急速に60万戸程度まで落ち込んでいく可能性もあります。
もうひとつの影響は、2015年には消費税だけでなく多くの負担増が重なることです。このことは住宅予算の減少を招きます。あくまで現在の情報によるシミュレーションですが負担増は、世帯年収500万円のファミリー世帯で年間約34万円にのぼります[表]。月収1カ月分が飛ぶ計算で、1カ月あたりでも3万円弱の負担増。
これがそのとおりになるなら、分厚かった日本の「中流」がいよいよ抜け落ちていくことになります。当然、住宅予算にも影響するでしょう。単純計算ですが、標準の世帯では月3万円弱、住宅費などの消費を切り詰めなければ、今の生活水準は維持できないことになるからです。
これらから考えても、消費税増税後、つまり2015年には「脱・住宅貧乏」への道筋を付けておかないと、多くの国民は住宅費の負担に耐えられなくなる。そんな不安があります。
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