東京都は5月24日、積水化学工業との共同で実施する「フィルム型ペロブスカイト太陽電池」の性能検証を開始。下水道局の下水処理施設「森ケ崎水再生センター」(大田区)に同電池の設置が完了したと発表した。同電池の発電効率や耐腐食性能などを調べる試験を行うもので、検証施設としては国内最大規模となる。水処理施設の反応槽覆蓋上部に、大きさの異なる電池3種類・3枚を設置。総面積は約9平方メートルで、定格出力約1kWを見込んでいる。
フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、軽量かつ柔軟で、ビルの壁面をはじめとしたさまざまな場所に設置が可能な次世代太陽電池。フィルムに「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶構造を塗布して製造する。
薄く軽くフレキシブルで設置の範囲が広がる▽製造技術開発によって大量生産・製造コストの低下の可能性がある▽日本発の技術で、主原料のヨウ素は世界産出量の約20~30%が日本国内産―などのメリットがある。こうしたことから海外依存度が高い従来のシリコン系太陽電池と比べて、高い競争力があるとの期待も大きい。
小池知事は5月26日の定例会見で「ペロブスカイト太陽電池を大規模に設置した場合に、発電効率は良いものなのか、安定性はどうなのかなどについて今回検証する。これまで日本が先駆けて実証実験を行ったにもかかわらず、他国に持って行かれた例を何度も見てきた。そういう意味でも、下水道局の敷地を活用することで開発が進み、より早く確立した技術を実装するための助けになることを願っている」とコメントした。
森ケ崎水再生センターは、総面積1万4675ヘクタールの下水処理施設。品川区・目黒区・大田区・世田谷区などの下水を受け入れている。
自己電源(都市ガス発電設備・蓄電設備など)を有し、バイオマスエネルギーのメタンガスを燃料として、年間約2000万kW時の発電を行っている。大規模建築物を有する公共施設は、ペロブスカイト太陽電池の設置場所にも適しており、脱炭素社会の実現に貢献する潜在市場の一つとして期待されている。
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