地元産の良質な木材「天竜材」と大工の技術を生かした伝統構法による家づくりを手がける木ごころ工房(静岡県森町)は、志や価値観を共有する地域の大工、工務店の仲間とともに、日本の伝統的な家や暮らし、文化を後世につないでいくことに力を注ぐ。同社代表の松村寛生さんは「つくり手、住まい手の垣根なく地域のみんなで地域の家をつくり守っていく、古き良き日本独自の“結(ゆい)”の精神と文化を伝えていきたい」と話す。
「石場建て・木組み・土壁」が同社の家づくりの特徴だ。天竜材のなかでも「他のエリアの木材にはない張りと艶が魅力」(松村さん)と絶賛するスギをメインとする天然乾燥材を手刻みで加工し、合板や金物を使用しない伝統的な技術を用いてつくる。松村さんは「天竜材という素晴らしい“地域の宝”に恵まれているおかげで、それを扱うことのできる本物の大工と技術が他地域に比べて残っており、伝統的な家づくりに対する地元の理解もある」と話す。
ただ一方で、全国的な住宅業界における傾向と同じように、大工や左官、建具など各分野の職人の高齢化と若手不足は深刻だ。同時に自社も含めて、伝統的な木の家づくりを手がける大工、工務店は規模が小さいことなどもあり、生産の合理化や人材の育成が難しい。こうした状況を踏まえて松村さんは「いま、地域の木や大工による日本の伝統的な家づくりや暮らしとそれらに伴う文化が途絶えてしまいかねない分岐点にあるのではないか」と危機感を募らせる。「そうしたものを守り、後世に伝えていくために、つくり手と住まい手の垣根を越えて地域ぐるみで取り組む必要がある」と訴える。
力を合わせて若手を育てる
木ごころ工房では・・・
この記事は新建ハウジング5月30日号20面(2023年5月30日発行)に掲載しています。
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