民間でも事業用の非住宅建築物に木造を採用する動きが広まっている。新たな技術や工法の開発により、大スパン・大空間など非木造のような設計を、非木造より有利なコストで実現しやすくなった影響も大きい。最新の技術開発動向を紹介する。
都市部狭小地向けに新開発 LC gate構法
ライフデザイン・カバヤ(岡山県岡山市)が運営するCLT建築のノウハウ等を提供するネットワーク・日本CLT技術研究所は、狭小地向けの新構法「LC gate構法」を開発した。このほど、エー・ディーアンドシー(東京都世田谷区)が手がけた同構法のプロトタイプによる店舗が、東京都内で竣工。5月19日、メディア等を対象に公開された。
同構法は、X軸をゲート状のCLTパネルを順に並べたCLT薄肉ラーメン構造とし、Y軸のCLT壁式構造を組み合わせることで狭小地に対応する。脚部金物と梁接合金物は、同構法向けに新規開発した。現時点では工期や人工の面でコストが割高で、 今回の事例はあくまでテストケースとの位置づけだ。同社開発部の藤本和典さんは「狭小地活用の答えの一つになるよう建設した」と話す。
今回の現場は、資材置き場がない、周辺道路の混雑が激しく道路占有の時間帯が制限されるなど課題があった。また、前に電線があり、クレーンによる搬入用の治具も必要であることが事前に判明していたため、BIMを使用し、3Dによる施工シミュレーションを実施。施工日程や作業時間帯などを踏まえた効率的な建て方を検討した。
結果的に、人工の慣れと経験にも左右されるものの、建て方の日数を7日から4日まで短縮できることが判明。今後は実用化に向け、人件費も含めて工事費用の削減を図っていく。
非住宅分野の簡易化ツールを提案
BXカネシン(東京都葛飾区)では、非住宅・中大規模木造建築を、“多目的建築”を指す「MP木造建築」と呼称し、保育園や高齢者施設、事務所、倉庫などの非住宅分野に取り組む提案を進める。
非住宅木造では、既製の接合金物による設計が困難な場面が発生することが多い。同社は特注金物制作にも対応しつつ、MP木造建築に特化したオリジナル金物も開発。金物の選択肢を増やして金物検討の手間を省き、コスト削減を実現する。
また、最大スパン16mまでの建築物の構造検討を簡易化できるツール「MP木造倉庫」を提供する。スパンに応じたトラス構造をあらかじめ設計・計算した規格プランと、構造計算書などを提供することで、木造の倉庫などにかかる検討・設計・構造計算・設計図書作成の手間を大幅に削減できる。
非住宅CLT建築物の実証事業を募集
非住宅や中高層建築物の分野でも木造化・木質化を推進している日本住宅・木材技術センター(東京都江東区)は、普及性や先駆性が高いCLT建築物の取り組みに対する助成「CLT活用建築物等実証事業」を実施している。5月18日には、2022年度の追加募集を行うことを発表。CLT を活用した建築物の設計・建築、部材の実証、製造者との連携を図るモデル的な取り組みが対象で、建築費等の事業経費の10分の3、または2分の1を上限に助成する。
応募締切は6月12日。戸建て住宅は補助対象外となるので注意が必要。問い合わせは同センター研究技術部TEL03-5653-7581まで。
この記事は新建ハウジング5月30日号4面(2023年5月30日発行)に掲載しています。
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