業界に先駆け「検査」と「保証」で事業者をサポート
住宅業界を取り巻く環境は厳しさを増している。各社、生き残りをかけた模索が続く中、注目が集まっているのが「非住宅木造建築物」の分野だ。成果をあげる工務店も登場し始めている。
住宅瑕疵担保責任保険法人である株式会社住宅あんしん保証のグループ法人、一般社団法人住宅あんしん検査(東京都中央区)は、非住宅木造建築物を供給している、あるいは、新たにこの分野への参入を目指す事業者をサポートするため、いち早く非住宅木造建築物向けの検査・保証サービス「あんしん建物検査・保証制度」の販売を開始した。
同制度の開発から販売に携わる赤西一宏氏にその背景や今後の展望を聞いた。
非住宅木造建築物に特化した新たな検査・保証制度
――業界に先駆けて2021年11月に「あんしん建物検査・保証制度(以下「制度」)」を発売しました。なぜ「非住宅木造建築物」に特化したのですか?
「住宅用途ではない建物を建てるけど、新築住宅向けかし保険に加入できるの?」
住宅瑕疵担保責任保険を扱う保険法人である住宅あんしん保証には、かねてよりこうした問い合わせが度々寄せられていました。
ご存じの通り、新築住宅の場合、品確法や住宅瑕疵担保履行法という法制度が整備されており、「かし保険」や「供託」といった仕組みが確立しています。ところが、非住宅の場合、同じ建築物であるにもかかわらず、このような仕組みはありません。前述の問い合わせも保険法人としては応えることができず、私個人としても、残念に感じていました。
また、脱炭素社会の実現に向け、法改正により木材利用を促進する対象が公共建築物から民間建築物を含めた建築物全般に拡大したことやSDGsに象徴されるような地球環境や持続可能な社会への関心の高まりもあり、建築物への木材利用促進の流れが国や地方自治体をはじめとして、加速していることも背景にありました。
そこで、今後、さらに非住宅木造建築物の分野は市場規模拡大に期待が膨らむとともに、新たに取り組む事業者も増えると考えました。さらに、事業者が安心してこの分野に取り組めるようになるには、第三者による検査や保証制度が欠かせないと判断し、「あんしん建物検査・保証制度」を開発、住宅あんしん保証のグループ会社である住宅あんしん検査で販売することにしました。
品質確保とリスクヘッジ
――「あんしん建物検査・保証制度」を利用することで、どんなメリットがありますか?
この制度は名前の通り「検査」と「保証」がセットになっています。加入するには第三者の建築士による3回の現場検査(基礎配筋検査、上部躯体検査、防水検査)すべてに合格しなければなりません。
現場検査で何らか指摘事項が見つかる割合は、住宅の場合、約10%であるのに対し、非住宅の場合には30〜40%にものぼることがあります。
住宅と比べて延床面積の規模が大きく、確認すべき箇所が増えることで、現場監督の目が行き届きにくいことも要因の1つと考えられます。
現場検査の実施により、施工品質の確保につながることはもちろん、関係者の意識向上も期待できます。
また、引渡し後に万が一、雨漏り等の事故が発生した場合には修補費用が保険金として支払われます。不同沈下事故も補償対象であることもポイントです。
既に、非住宅木造建築物に取り組んでいる事業者の中には、技術・品質に自信はあっても、新築住宅の場合とは異なり、かし保険のような仕組みがない現状に、漠然とした疑問や不安を抱えたまま引渡しを行っている場合もあると聞きます。
制度の加入で、10年間という長期にわたる保証の提供を実現、自社にとってのリスクヘッジにもなります。
知名度や施工実績の有無から生じる不安の払拭
さらに、非住宅のビジネスは主に「BtoB」と言われます。発注者が入札等で施工会社を選定しますが、その際には価格だけではなく、会社の規模や施工実績等も考慮されます。
一方で、一度受注して滞りなく引渡しを実現し、発注者に満足してもらえれば、その繋がりで2件目、3件目と続けて受注できる可能性があるのも非住宅のビジネスの特徴です。従って、新たに受注を目指す事業者にとっては、まず1件の実績をつくることが非常に重要になります。
制度に加入することで、はじめに品質に対する安心感を発注者にしっかりと印象付け、他社との差異化につなげることができます。
実際に、この制度を活用することで、受注額の大きな案件の獲得に成功した事業者もいます。この事業者は、その後も制度の加入を標準仕様として、提案に取り入れていくそうです。
一方、発注者にとっても、検査・保証で安心感が得られれば、地域に根ざした中・小規模の事業者にも依頼しやすくなるかもしれません。地元企業と協力することで、地域の活性化にも貢献できます。
新たな「非住宅木造建築物のスタンダード」に
――今後の展望は?
販売開始から1年半以上が経過して加入数も増えており、さまざまな用途の建築物に導入いただいています。
新たに非住宅木造建築物に取り組む事業者だけではなく、既に積極的に取り組んでいる事業者にもさまざまな媒体や機会を通じて知ってもらい、将来的にはこの制度が「非住宅木造建築物のスタンダード」として、広く浸透してほしいですね。
そのためにも、皆様から寄せられるご意見やご要望に向き合い、改良を重ねることで、さらに利用しやすい制度にしていきたいと考えています。
実際、制度の周知を進めていく中で「混構造の建築物にも利用できないか?」というご相談がありました。当初、この制度では引受要件の1つである構造については「木造」に限定していましたが、いただいた声を反映して、今年の3月からは「木造を含む混構造」に拡大しています。これにより「1階が鉄筋コンクリート造、2・3階が木造」の場合でも制度の申込みが可能となり、ご利用いただける機会が広がっています。
引き続き、非住宅木造建築物の分野への参入拡大を目指す事業者のサポーターとして、この制度を普及させ、皆様と一緒に市場を盛り上げていきたいと思います。
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