会計検査院が5月17日に公表した「防災・減災、国土強靱化のための3カ年緊急対策」(2018年閣議決定)に関する会計検査の結果によると、災害発生時の緊急対策として実施した事業の中に、工事が終わっていないものや着手していない事業が336事業あったことが明らかになった。さらに閣議決定したものとは異なる内容の事業を実施した省庁があることも分かった。
「3カ年緊急対策」は、「平成30年7月豪雨」「平成30年台風第21号」「平成30年北海道胆振東部地震」などの自然災害を受けて実施されたもので、2018年から2021年に掛けて集中的に実施することが定められていた。
3年間の予算総額は計3兆6790億円で、支出額の合計を各府省庁が報告することになっていた。ところが5省で対策ごとの支出済額が把握・報告ができていなかったことから、会計検査院が集計。支出済額の合計は3兆4271億円(予算額の93.1%)だった。
防災・安全化とは関係のない事業も
また359事業(33対策)では、事業の内容が測量業務、設計業務のみで、工事を実施する内容となっておらず、このうちの336事業で2022年6月末現在、施工中または未着手のままになっていた。他に閣議決定の内容とは異なる事業を実施していた省庁があることも判明。耐震性がある建物を新築した例(厚労省・24億6135万円)や、安全化とは関係のないトイレの洋式化工事を実施した例(文科省・89億7555万円)、防災重点ため池以外のため池を改修した例(農水省・6930万円)などがあったという。
達成目標を把握するためのKPI(重要業績指標)を年次計画に記載することも定められていたが、▽初期値・目標年度・目標値が記載されていない(4対策)▽進捗状況を確認するのに不十分なもの(13対策)▽目標の達成状況が明らかでないもの(36対策)―などが見受けられた。
会計検査院では、内閣官房国土強靱化推進室および各省庁に対し、国民に十分な説明を行うとともに、防災・減災の効果が十分に発現されるよう、引き続き取り組みを行うことを要請している。
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