中小企業庁は4月28日、2023年版の「中小企業白書」「小規模企業白書」を公表した。中小企業の動向を明らかにするとともに、成功事例や現状の打開策、支援策などについても紹介している。
2022年度の中小企業全体の動向は、感染症流行前の水準に戻りつつある一方で、物価高騰により収益減少の影響を受けた。人手不足も引き続き深刻な状況にある。感染症やカーボンニュートラル、生産性向上への対応として、デジタル化や事業再構築に取り組む企業の割合が増えた。
中小企業全体の業況DIは2年連続で低下。業種別では、建設業を除くすべての業種で2020年に大きく業況が悪化したが、建設業では他業種のような落ち込みは見られなかった。その後、いずれの業種でも2期連続で回復している。業種別売上高は、2020年は多くの業種で売上高が減少したが、2022年になると「情報通信業」(前年度比32.6%増)、「運輸業」(同12.7%増)など売上高が増加する業種もあった。「建設業」は同2.4%の増加。
コロナ倒産、建設業は飲食業に次ぐ2位
全体の資金繰り状況は、感染症流行による売上げの急激な減少とそれに伴うキャッシュフローの悪化により、2020年に大きく下落。新型コロナウイルス関連の破綻は、2023年2月28日時点で累計5337件(うち倒産5142件)となった。業種別では「飲食業」が最多で848件、次いで「建設業」618件、「食品卸売」228件の順だった。
雇用については、2020年に完全失業率がやや上昇したが、その後は低下傾向に。有効求人倍率も2020年に大きく低下したが、再び上昇傾向となった。従業員数過不足では、2020年前半には人余りの傾向が見られたが、後半から不足感が急増した。「建設業」では2020年にも不足感が続き、人手不足が常態化している。
人材確保のための方策では▽給与水準の引き上げ(63.6%)▽長時間労働の是正(46.7%)▽シニア人材の活用(34.5%)―を挙げた企業が多かった。給与については、大企業では建設業を含めて回復傾向にあるが、中小企業はいずれの業種も直近10年間は大きく変動していない。
成功事例では、新技術の獲得への挑戦や優秀な人材の確保など、成長に向けた価値の創出に取り組んだ企業として金杉建設(埼玉県春日部市)、加和太建設(静岡県三島市)、事業承継で社風を一新した企業として小柳建設(新潟県三条市)が取り上げられた。
大工育成・住宅グリーン化などに支援策
巻末では中小企業庁による2023年度の中小企業施策を紹介。日本政策金融公庫による資金繰り支援のほか、価格転嫁対策、グリーン化・デジタル化、地域課題解決に向けた取り組みなどに支援を行う。中小建設・不動産業対策では、▽地域建設業経営強化融資制度▽下請債権保全支援事業▽地域型住宅グリーン化事業▽大工技能者等の担い手確保・育成事業―などに支援策が講じられる。
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