経済産業省がグローバルな活躍が期待されるスタートアップを選定し、育成する「J-Startup」に、建設関連企業11社選ばれた。同プログラムは実績のあるベンチャーキャピタリストや大企業の新事業担当者など外部有識者からの推薦により、潜在力のある企業を選び、政府機関と民間企業のサポーターが集中的に支援するもの。選出された企業は海外・国内大規模イベントへの出展や各種補助金の優遇措置、海外展開などの支援、研究・実験・開発への協力、専門家・ノウハウを持つ人材によるアドバイスなどが受けられやすくなる。
以下に住宅・建築関連の「J-Startup2023」選定企業を紹介する。
アメリカの住宅にイノベーションを起こすことを目的にシリコンバレーで創業した住宅関連スタートアップ企業。建築とテクノロジーを融合させたデザイン性の高い建売住宅を手掛ける。
次世代のライフスタイルをデザインし、住宅デザインや技術を開発。スマートフォンでコントロールできるAIスピーカー、照明・空調、スマートドアロック、セキュリティシステムなどを住宅にビルトインしてスマートホームとして提供している。手が届きやすい価格帯で効率的な間取りや豊富な収納スペースなど、サイズ以上の快適性を確保した「都市型プレミアムコンパクト住宅」を、ミレニアル世代向けに販売している。
推薦者は「日本企業とのコラボレーションを進めるなど、日米の架け橋のような存在に成長している。新たなグローバルスタートアップを日本から展開するモデルにもなり得る」と評価している。代表は代表取締役の本間毅。
日本初の3Dプリンター住宅メーカー。3Dプリンターで建築する球体の家は24時間以内の提供が可能。耐久性もあることから、大規模な自然災害時には緊急避難先の仮設住宅としても活用できる。強度・耐火性・耐震性・断熱性・美しさの5つの要素を持つ多機能素材の開発も行う。長期ローンを不要とする価格帯での住宅提供が当たり前となる未来を目指している。「住宅市場には成長性があり、建設業の人手不足の激化にも後押しされて、住宅の購入側、生産側の双方で成長が期待できる」と推薦者。代表は小間裕康CEOと飯田国大COO。兵庫県西宮市。
建設用3Dプリンター技術の研究開発を行うテック企業。研究開発・サービス提供まで一気通貫で行う。型枠を使用せず、モルタルを積層してコンクリート構造物を作成する技術で令和4年度「国土交通省インフラDX大賞」で優秀賞を受賞した。代表は代表取締役の岩本卓也氏と大岡航氏。東京都港区。
■クアンド
遠隔地にいる管理者と現場作業者をつなぐ遠隔支援ツール「SynQ Remote(シンクリモート)」を開発・提供する企業。現場映像のリアルタイム共有や、声に出した指示をテキスト化する音声文字変換機能、特定箇所を画面上で指示できるポインタ機能などを有する。建設現場のDX化、技術者不足への対応、工程数の削減などに貢献できるとして期待されている。代表は代表取締役CEOの下岡純一郎。福岡県北九州市。
■助太刀
職人と工事会社のマッチング、建設業特化の就職・採用サービスを運営する企業。工事の受発注(協力会社・職人検索、他)、工事代金の即日受取などの機能を有するアプリ「助太刀」の提供、建設業界に関する調査・研究を行う「助太刀総研」、工具の販売・レンタル・修理を行う「助太刀ストア」など、建設業に関わる幅広いサービスを展開する。「建設業のプラットフォーマーとして海外進出を含めた拡大が期待できる」と評されている。代表は代表取締役社長兼CEOの我妻陽一。東京都新宿区。
重い建材を運搬する「運搬トモロボ」、鉄筋結束を行う「鉄筋結束トモロボ」、土木・インフラ工事向け「太径結束トモロボ」などの省人化・省力化ソリューションを開発するスタートアップ企業。人と共に働くロボットにより、建設現場の生産性向上と作業者の負担軽減を実現する。他にも省人化ロボットをワンストップ派遣する「建設DX支援サービス」や、現場の状況やニーズに則した実践的ソリューションの受託開発、工事現場における感染予防対策のための各種製品の開発・販売なども行っている。代表は代表取締役社長兼CEOの眞部達也。香川県木田郡。
■WOTA
水問題の構造的な解決を目指し、全生活排水の再生循環利用に対応した「小規模分散型水循環システム」「水処理自律制御技術」などを開発。限られた電力や水資源での生活を可能とする「オフグリッド居住モジュール」により、地域やインフラに縛られない新たな暮らしを提案する。「水インフラに関する自律分散型の新しいソリューションは完成度が高い。日本の地方部にもグローバルにもスケールする事業」と評される。代表は代表取締役の前田瑶介。東京都中央区。
小型海水淡水化装置などの水処理関連機器の開発・製造販売を行う水のディープテック企業。プラントサイズだった海水淡水化装置を、ソーラーや家庭用100vといった低エネルギーでも稼働できるようにコンパクト化した。工事現場や災害時の避難所、海外では南太平洋やフィリピンの孤島や寒村に水インフラを提供している。柳瀬善史社長。沖縄県うるま市。
■自然電力
太陽光発電、風力発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギー発電所の開発、EPC(設計・調達・建設)、保守運用、個人・法人向け電力小売事業などを手掛ける企業。東南アジア・ブラジルを中心に海外にも事業を展開している。これまでグループとして、国内外で1GWを超える発電事業に携わった。「再生可能エネルギーにおける技術とオペレーションエクセレンスのレベルが高く、グローバル市場で成長する可能性が高い」と期待される。代表者は代表取締役の磯野謙・川戸健司・長谷川雅也。福岡県福岡市。
世界最高水準の断熱性能をもつエアロゲル素材「TIISA」、電子ビーム物理蒸着システム「EB-PVD」による高性能遮熱コーティングサービスを提供する素材メーカー。断熱シート、ボード塗料、建材などの製品にも応用できる。代表はCEOの小沼和夫。茨城県つくば市の「物質・材料研究機構」内に拠点を構える。
材料と構造の組み合わせにより特殊な機能を持たせる人工物質「メタマテリアル」の活用に向け、量産用の製品設計アルゴリズムを開発する企業。「メタマテリアル」は振動・音・変形・熱に関する機能の向上、部材一体化・材料代替による軽量化・コスト削減などを可能とし、建材にも応用できる。代表は代表取締役CEOの大嶋泰介。東京都港区。
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