タブロイド版の好評連載「小さな工務店のブランディング講座」が、4月から新建ハウジングDIGITALに場を移して再スタート。DIGITALでの第1回目は「富裕層」ゾーンへのシフトを考える際に大切な「マインドシフト」について解説します。
これまで割安感で受注してきた工務店が、予算のある層で受注しようとしたとき、まず変えなければいけないのが「マインド」です。つまり「高いと売れない」「そんな予算のお客さんはいない」と思っているうちは、富裕層へのシフトはできません。
これはトップだけでなく、直接お客様と接する営業スタッフのマインドも変わらないといけないのですが、ローコスト系をずっとやっていた営業マンだとなかなかマインドシフトができません。
「社長、そんな上の層向けのモデルハウスをつくったって、そんなお客さんばかりじゃないですから」とか「安い仕様のモデルハウスがないと(契約が)決まらないです」など「できない理由」をならべはじめてしまいます。
富裕層が好むデザイン・仕様のモデルハウスをつくって、正しくコミュニケーションデザインを施せば、そこに反応する層のお客様が、一定は来るようになりますが、スタッフがその層に対応できないと契約まで至りません。
“反対するスタッフは退職”
10年以上前の話になりますが、2000万円程度の価格でデザイナーズ風の住宅をつくっていた工務店・A社が、設計を建築家に、外構を造園家に依頼して、高品位なモデルハウスを建てたことがありました。当時はチラシがまだ効く時代でしたので、あえて生け花のように美しい庭の写真をメインに据えたチラシを作成し、ウェブサイトもそのイメージでつくり直したのですが、庭の魅力に惹かれた予算のあるお客さんが見学会に多数来場いただき、予算を3000万円近くまで引き上げることに成功しました。
モデルとコミュニケーションツールをきちんとブランディングできたことも、A社が成功した大きなポイントですが、一番の要因は、手間も時間も掛かる家づくりに反対していたスタッフに辞めてもらい、自分たちの進む方向を共有できるメンバーだけで体制を整えたことでした。「こういう質の高い家づくりをこのエリアに広めていくんだ」という想いをスタッフ間で共有できない限り、富裕層・準富裕層へのシフトは難しいといえるでしょう。
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