長らく「単純労働は機械に取って代わられる」と言われてきたが、機械学習(ML)と人工知能(AI)の登場によって、クリエイティブな仕事ももはや安全圏とは言えなくなりつつある。建築設計も例外ではなく、米ハーバード大学の住宅研究共同センター(JCHS)は昨年11月、人工知能が建築設計に与える影響についてレポートを発表し、「建築の分野がこれらの発展に影響されないと考えるのは甘い」と言及した。
JCHSは同レポートの中で、「AIによる建築デザインの全体的な生成は、比較的遠い存在に思われる」としながらも、AIが持つ「提案力」に着目。デザイナーに対してアイディアや代替案などを提供し、デザインの補助を行うサポートとして重要な役割を持ち得ると説明した。
また、AIによってコンピュータープログラミングが誰にでも扱えるようになることも、「AIが建築設計を破壊し得る側面」として同レポート内で言及した。
コンピュテーショナル・デザイン導入の広がりや業界のDX化の推進により、建築技術者にプログラミング能力が求められる傾向がすでにあったが、プログラミング学習には決して低くない壁があった。AIによってこれが取り払われるため、建築業界とコンピューターとの関わりはますます深まっていくとみられる。
米ゴールドマン・サックスも、AIが建築業界に与える影響の大きさについて予測している。
3月26日に発表された「人工知能が経済成長に及ぼす潜在的で大きな影響について(The Potentially Large Effects of Artificial Intelligence on Economic Growth)」という調査レポートでは、米国においてAIによる自動化の影響を受ける雇用の産業別シェアが示され、「建築・エンジニアリング(37%)」は「事務・管理サポート(46%)」、「法務(44%)」に次いで3位となっている。
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